侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。楽天浅村栄斗内野手(30)は球界屈指の「仕留め力」が光る。データに乏しい投手が待ち受ける国際試合でも、持ち前のフルスイングで仕留めきる。

19年11月、プレミア12決勝の韓国戦、7回裏日本2死三塁、右翼に適時打を放つ浅村
19年11月、プレミア12決勝の韓国戦、7回裏日本2死三塁、右翼に適時打を放つ浅村

敵に、息つく間さえ与えない。浅村の今季3球以内の成績は、109打数45安打、打率4割1分2厘、5本塁打、24打点。左足を高く上げるスタイルが基本だが、時にはすり足でタイミングを計り、右膝に土がつくほどの“マン振り”で捉えきる。「どんなピッチャーでも自分の間合い、タイミングでしっかりボールに入っていくことが大事」。18・44メートルの空間を支配し、誘発した失投を逃さない。

昨季、32本で自身初の本塁打王に輝いた。今季は88試合終了時で10本。「バックスクリーンに数字が出ちゃうので、やっぱり気持ち悪い」と無意識に数字に追われる日々を過ごす。移動ゲームの翌日でも、Tシャツ短パン姿で誰よりも早くグラウンドに現れ、バットを握る時もある。「ホームランを打ちたくて打てる、ホームランバッターじゃない」。追い込まれれば逆方向への意識を高め、直球、変化球の両面に対応。12球団最多の70四球を稼ぐように、圧倒的威圧感でつなぎの役割も担う。

浅村の主な国際大会成績
浅村の主な国際大会成績

19年のプレミア12では3、5、6番に座り、各所で存在感を示した。1次リーグ初戦のベネズエラ戦で2安打を放つと、2次リーグ米国戦で3安打3打点。決勝の韓国戦でも2安打1打点と、チームの行く先を左右する一戦で確実に数字をたたき出す。「自分の役割はとにかくランナーをかえすこと、ひと振りで流れを変えること」。圧がかかればかかるほど、神経を研ぎ澄ませ、力を発揮する。

侍斬りをもくろみ、未対戦の剛腕たちが海の向こうからやってくる。落ちる、曲がる、動くボールを短期間で捉えなければならない。今季、外国人9投手とプロで初対戦し13打数4安打、打率3割4厘、1本塁打、5打点。初見にも動じない浅村の「仕留め力」は、金メダルが使命の極限状況下でいっそう輝きを増す。「シーズンとは違ったプレッシャーも緊張感。日本代表でしか味わえない経験はあるし、自分の野球人生の中で必ずプラスになると思う。そういう重みのある試合の中でやれることをやっていきたい」。

昨年9月23日、ロッテ戦。7回に防御率0・00の唐川から決勝の28号2ランを放ち、お立ち台で涌井から「“浅村様”と呼ぼうかな」とあがめられた。打ってほしいところで、打ってくれる。ファンの願いにバットで応え続ける“浅村様”が、勝利の神様を振り向かせる。【桑原幹久】