<指名を待つ男たち(3)>

無印の寡黙なバットマンは、期待を胸に抱きながら運命の日を迎える。仙台育英(宮城)の秋山俊外野手(3年)は「プロを目指して高校3年間やってきた。評価は低いかもしれないけど、自分の目標でもあるプロ野球選手になれる最初のチャンスだと思う。やれることをやって、結果を受け入れたい」とうなずいた。

ドラフトファイル:秋山俊
ドラフトファイル:秋山俊

走攻守の総合力を武器にプロの扉を開く。「打って、走って、守って。3拍子そろった総合力には自信を持っている」と胸を張る。広角に打ち分けるセンスが光る中距離砲。50メートル走6秒1。守備範囲が広く、強肩も兼ね備える。同校OBのソフトバンク上林とプレースタイルがダブり、「上林2世」のポテンシャルを秘めている。

課題と向き合い、試行錯誤を繰り返して打撃フォームを固めた。今春センバツでは8強入りした一方で、自身は初の全国舞台で打率2割5分。不本意な結果に終わり「タイミングの取り方を手探りで見直し、今のフォームにたどりついた」。昨冬から取り組んできた「ヒッチ打法」を捨て、グリップで弧を描く形に変更。トップの位置がスムーズに決まるようになり「目線のブレがなくなって、打球の質も良くなった」と手応えをつかんだ。

3ランを放つ仙台育英・秋山俊(2021年7月8日撮影)
3ランを放つ仙台育英・秋山俊(2021年7月8日撮影)

大ブレークを誓った最後の夏は、宮城大会4回戦で仙台商に敗れた。アピール機会を失ったが「最後に悔しさを味わい、上の世界でやっていくのに良い経験ができた」と、敗戦翌日から木製バットを振り込み続ける。悔しさを、プロの舞台で飛躍するための糧として指名を待つ。【佐藤究】