読書の秋、記者が野球にまつわる本を紹介します。

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24年春にロッテ吉井理人前監督(60)の「聴く監督」を購入したことが、私の進路を変えた。千葉出身で小さい頃からロッテファン。当時就職活動中で、教員を志していた。指導者の心構えとして勉強になるだろうと思って手に取った著書には、就任から1年が経過し、初めて経験した監督業への思いや学びが丁寧につづられていた。その本との出会いが野球人を取材したいという思いをかき立て、私は教員ではなく、記者を志す決意を固めた。

吉井理人著「聴く監督」
吉井理人著「聴く監督」

学生時代の得意科目は数学で、苦手科目は国語。文章を読むのも書くのも好きではなく、理系大学に進学。統計学を中心にデータ分析に励んでいた。小学3年から野球を始め、大学4年まで継続し、指導者として野球に携われたらと教員の道をキャリアの選択肢と考えていた。吉井氏は監督就任後、常に新しい発想で日本野球をアップデートしてきた人物だ。どのような考えで野球に向き合っているのか疑問に思い、勉強していきたいと読み始めた。

しかし本を開くと、野球以上に選手への向き合い方、人間としての考え方に驚いた。特に印象に残ったのは「自主性」と「主体性」の違いを説いた一節である。

「自覚、意思を持ちながら他人に頼ることなく自らの考えをまとめ、それをベースにして率先して動くことが『主体性』だと考えている」

私自身、困ったときは他人に頼ってしまう場面が多く、主体性が欠けていると気づかされた。記者の仕事に就いてからも主体性の大切さを実感する。新人の私は、他社の記者の動きをまねしながら、取材をしていた。すると、自社の先輩記者から「自分から動くと、もっと仕事が楽しくなるよ」と声をかけてもらった。それから少しずつではあるが、気になった点を積極的に問うようになった。

記事の書き方や内容はもちろんのこと、取材の仕方も人の数だけアプローチがある。正解はない。わからないときに他人の力を借りることも必要だが、頼りきりでは人生が狭い範囲で終わってしまう。試行錯誤を繰り返し、自分のスタイルを確立していきたい。

他にも、コーチとのコミュニケーションの取り方や、発想を瞬時に転換させる柔軟な考えなど、1人の人間として、吉井氏の哲学には強く心を動かされた。今度は自らが取材を通じて、アスリートたちの多様な価値観に触れ、それを伝えていきたい。この思いから、スポーツ記者として歩み始めた。【北村健龍】