楽天三木谷浩史会長兼オーナー(53)が、余すところなく語ります。球界再編問題を乗り越え、2005年(平17)シーズンから参入。イノベーター(革新者)の精神で平成後期の球界に息吹を吹き込み、13年に日本一を達成しました。来年のオーナー会議では議長を務める大物が、平成最後の年の瀬に何を思うか。ほぼノーカットの5回連載です。

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プロ野球の未来をどう考えるのか。平成が終わりを迎えようとしている今、非常に重要な局面にあると思います。

現代社会においては、娯楽といえばお茶の間でプロ野球を見ることが、長い間の楽しみでした。今は他のスポーツだけでなく、ゲームも含めて、さまざまな過ごし方がある。子どもの数、競技人口はどんどん減っていく。プロスポーツですので、ちゃんとビジネスとして捉えた上で、どうやって総合的に盛り上げていくか。野球の魅力を伝え、高めていくか。あらゆる手段を使って、考えていかないといけません。

今までの「日本のプロ野球」という視点を外し、グローバルな視点で物事を捉える必要があります。サッカーにはFIFA(国際サッカー連盟)があって、その中に各国の協会やプロリーグがある。野球の場合は全く、その形がない。だから国際的な視野を持って、メジャーリーグと話をしながら、考えなければいけないと思います。

サッカーはやはり、グローバルなスポーツです。野球はアメリカから始まって、南米、中米、アジアと広がっていった。地域的な広がりにおいては、ハンディがあると言わざるを得ない。

一方で、悲観するだけではありません。日本の野球は間違いなく、メジャーリーグに次いで世界でNO・2だと思います。残念ながらサッカーは、世界NO・2ではない。20位、30位に入れるか。この現実をうまく使いながら、いかに魅力を上げていくか。

マーケットとして、台湾なり韓国とのつながりを考えていくのは当然です。ただMLBの方にも「行き詰まり感」があるのは間違いなく、新しいアイデアを欲しがっている。日米が一丸となって、また盛り上げていこう…そんな動きを作りたい。

来年はオーナー会議の議長を務めることになりました。1年という非常に短い期間で、少しでも方向づけができればいいなと思います。

おそらくオーナー会議とは、メジャーの形式をまねて作った仕組みだと思います。ただ、そもそもの違いとして、日本のオーナーは、全員が毎日、野球の経営に携わっているわけではない。皆さんお忙しい事情もある。もっと実行委員会で「どうやったら盛り上がるんだ」とやってもらって、そこに実効的な決定力を置くべきだと考えます。

サッカーの場合はオーナー会議がなく、経営に携わっている社長が集まって実行委を開いて、やっている。衆議院と参議院じゃないですが、実行委に力を持たせて、アカウンタビリティー(説明責任)を作り、権限と責任を与える。オーナー会議は、プロ野球のビジョンという大きなことを考え、議論し、合意できる場にしたい。

権限という視点では、コミッショナーも同じです。今は「仲裁役、裁判官」の立ち位置に近いですが、そういう局面に時代はない。ビジネスリーダーとしてのコミッショナー。4大スポーツの1つであるNBAの場合、コミッショナーはやはり、ビジネスに入り込んでいる。どうやって推し進めるのか。

コミッショナーという名前も…野球協約自体を、見直す必要があると思うんです。過去からの力学関係があって、難しいかもしれませんけど。1チームに依存したモデルというのは、メディアが多様化した今、サステイナブル(発展的な持続が可能な状態)じゃない。もしかしたら「野球協約ごと替えろ」という話になるんじゃないでしょうか。(つづく)【取材=宮下敬至】

◆三木谷浩史(みきたに・ひろし)1965年(昭40)3月11日、兵庫県神戸市生まれ。明石高から一橋大を経て88年日本興業銀行入行。93年米ハーバード大学院でMBA(経営学修士)取得。95年興銀退職、96年クリムゾン・グループ設立。97年エム・ディー・エム(現楽天)を設立。04年Jリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。同年はプロ野球界にも参入し、東北楽天ゴールデンイーグルスを誕生させた。08年1月球団オーナーから退任、球団代表取締役会長に就任。12年8月から球団代表取締役会長兼オーナー。

05年3月、ロッテとの開幕戦に勝利した楽天田尾監督(左)は三木谷オーナーとスタンドの声援に応える
05年3月、ロッテとの開幕戦に勝利した楽天田尾監督(左)は三木谷オーナーとスタンドの声援に応える
05年3月、オーナー会議に出席した楽天三木谷浩史オーナー(中央)
05年3月、オーナー会議に出席した楽天三木谷浩史オーナー(中央)
14年11月3日付、日刊スポーツ東京版
14年11月3日付、日刊スポーツ東京版