41年前に末次が打ち立てた8打席連続安打の記録は、いまだ破られていない。

末次 もし破られるとするなら、自分の教え子が達成してほしいですよね。

過去、教え子が期待させてくれたことが2度あった。最初は、柳川(福岡)コーチ時代に甲子園に出場した91年夏だった。2年生8番ライト開田博勝が2回戦・専大北上(岩手)戦の第3打席から、3回戦・佐賀学園戦の第4打席までの7打席で6打数連続安打(四球1を挟む)を記録した。

2度目は末次の長男だった。同校監督として迎えた02年夏。「4番センター」は末次峰明(たかあき)だった。初戦の富山商戦の第4打席で左前安打を放っていた峰明は、2回戦の常総学院(茨城)戦で第1打席から中安、右安、左安と安打を続けた。2試合にわたり「4打席連続安打」。自らの記録の半分ではあるが、末次は目を細めていた。

末次 5打席目はダメだったね。結局、常総学院に負けたんで終わったんですけど。ちょっと、おおって思ったのは確かです。

「親子で甲子園」は長男だけでなかった。1歳下の次男・哲也とは翌03年のセンバツに出場。哲也は初戦の徳島商戦に「7番センター」で出場し4打数1安打(右安)に終わって、敗退した。

末次 監督の息子が兄弟そろって一緒に甲子園に出場したのも、そういないでしょう。

親として息子の成長をそばで見ることができた監督業。末次には指導する上での信念がある。

末次 より実戦に通用する練習とは何なのか。それが一番大事です。

就任1年目からグラブトスやランニングしながらのキャッチボールなど、実戦に即した練習を次から次に取り入れてきた。試合前ノックは決められた順番で打つのではなく、ノッカーが自由に打つことに決めているのも、より実戦的な緊張感を求めてのもの。もちろん、他校の練習方法も勉強材料にしてきた。PL学園(大阪)が、わずか3時間しか練習しないことには驚いたという。

末次 全体練習は3時間ですよ。あの強いチームなのに。あとは自主練習なんです。PL学園に入学してくる子たちは中学までに技術はほぼ完成している。教えることはあまりないらしい。あとは体をうまく鍛えていくか、そのバランスが大事らしいです。

そして言葉を続ける。

末次 学校のグラウンドでの練習は、自分でやってきた練習の復習。自分でやってきた予習を試す場なんですよ。(学校の)練習で何かをつかむんじゃなく、自分でつかんだものを全体練習で精度を高めていくんですって、いつも生徒には言うんです。

思えば自身の高校時代も徹底的に鍛えられながら、ああでもない、こうでもないと朝まで素振りを繰り返してきた。全体練習は復習の場。そのポリシーをもとに全力で指導にあたってきた。

末次 見てください。今年のチームも楽しみな1年生が多いんです。

来年のセンバツ出場を目指す秋季大会前の練習。学校のグラウンドでの紅白戦をネット裏から眺める大男の瞳から、やさしい父親のような、温かいまなざしが注がれていた。(敬称略=おわり)【浦田由紀夫】

(2017年10月14日付本紙掲載 年齢、肩書きなどは掲載時)