チームの勝ち頭。ウエスタン・リーグとはいえ、ペナントレースの首位を行く阪神の柱的存在。甲子園球場の対中日戦15回戦に先発。どんなピッチングを見せてくれるか、期待をして注目してみた。今季2年目。プロ野球に憧れ、独立リーグを渡り歩いて願望をつかみ取った苦労人。野球に取り組む姿勢はまさに謹厳実直。精神面のブレはなく真面目人間そのもの。福永春吾投手(24)のこれからにスポットをあててみた。

 期待度は-。今シーズンの開幕戦(ソフトバンク)で先発マウンドに立ったことが物語っている。ファームではあるが、開幕投手は存在感の証し。ところがである。シーズン当初の調子はいまひとつ。なかなか勝てない状況が続いた。無駄な四球を出しては打たれる。カウントを整えられず、苦しまぎれにストライクを取りにいった球が甘くはいって打たれる。バッターを追い込んで自分が優位に立ったカウントでの勝負ができない。描いているイメージとは程遠い内容でありながら修正できない。いらだちを感じながらの登板。いい結果が出せるはずがない。まさに、ないないづくし。すべてが悪循環に。

 ピッチャーの、何よりもの良薬は勝ち星である。開幕から1カ月半も経過した5月1日だった。場所は開幕試合と同じタマスタ筑後。ソフトバンクを相手に今季初勝利を挙げると、以降、先発した試合(リリーフ1)は、ひとつの完封勝利を含んで5連勝と乗ってきた。福原ピッチングコーチに聞いてみる。「もう少しですかね」はじめのひと言が物語るように、1軍レベルから見た内容はまだ力不足ということ。「今日も立ちあがりから同じようなペースのまま終わってしまった。こういう、あまり良くない内容のときは、途中で修正できるぐらいの余裕がほしいですね。何事も経験ですが、シーズンはじめに比べればだいぶ良くなっています。福永の場合、馬力はありますし、真面目に野球に取り組んでいますので、がんばってくれると思います」と付け加えてくれた。体の強い人はたくましい。期待度は高い。

 野球が好きであるのも心強い。プロの世界に憧れて願望をつかみ取った選手だけに心構えも半端ではない。目指すはひのき舞台だが、この日のピッチング内容を振り返ってみると、まずは投球数の99球。6イニングの球数にしては多い。被安打6、奪三振4、与四球3、失点、自責点1は数字で見る限りはまずまずの内容だが、1失点の取られかたが悪い。先頭打者を歩かせた。本来、その回のトップバッターへの四球はご法度。このピンチは次打者の投手併殺でまぬがれたと思えば、二死後のバッターにも四球を与える。この回を3人でピシッと抑えておけば、相手を自分のペースに引き寄せることができたはずなのに、案の定このあと連打を許して1点を献上した。「今回の反省点はあの四球です」は福永だが、なんぼ勝ち頭でもこれでは昇格は無理。本人が一番よくわかっているはずだ。

 ものひとつ気になったのはボール先行の内容だ。99球の投球数がそれを証明しているが、各打者の初球がボール球になるケースが目立った。これも相手を自分のペースに巻き込めない一因。ピッチャーの経験者としてストライク先行とボール先行では、大きな違いがあるのは何度となく体験しているのでよくわかる。特に1軍のマウンドでは如実にあらわれる。1軍と2軍、バッターの力量にはかなりの差がある。「そうですね。優位なカウントで打者に向かっていくのと、不利なカウントから勝負していくのでは全然違いますからね。今日は、自分ではまずまずの内容だったと思いますが、これからはカウントを整えていくことも課題としてがんばっていきます」は福永である。もっと、もっとバッターに向かっていく姿勢を見せてほしい。147キロ、148キロのストレートは大きな武器である。今回は少々苦言を呈したが、次回は勝ち頭として自他ともに認めるピッチングを期待したい。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)