ぎこちなさそうに右翼の守備位置につく投手の西村憲(2010年9月9日撮影)
ぎこちなさそうに右翼の守備位置につく投手の西村憲(2010年9月9日撮影)

沖縄・宜野座キャンプ第2クール初日の5日。ふらりと球場を訪れたイケメンがいた。あいにくの雨だったがブルペンで投げる投手陣に熱心な視線を送っている。どこかで見た顔やなと思ったら阪神OBだ。西村憲。14年限りで退団した右投手だ。

現在は沖縄・名護にある社会人チーム「エナジック」で背番号18をつけている。阪神時代より精悍(せいかん)になったイメージだ。阪神の4年間で8勝を挙げているが、西村という男が知られるのは「外野を守った投手」としてだろう。

10年9月の中日戦(甲子園)。野手を使い切った後、クレイグ・ブラゼルが退場になった。そこで守備ができるとされていた西村が外野の守備についた。相手打者に応じ、打球が飛びにくいと思われる右翼と左翼を交互に守った。結局、守備機会はなく、試合も引き分けに終わった。それでも「一体、誰が守るんや」と周囲が思う中で出てきただけに衝撃は強かった。その場面を記憶している虎党も多いだろう。

「そうなんですよ。今でも会う人、みんなにそれを言われますからね。投手としての印象よりそちらの方が強かったようで」。32歳になった西村は苦笑し、そう話した。

そんな西村の顔を久々に見て、ふと板山祐太郎のことを思った。15年のドラフト6位で入団4年目。亜大では内外野を守り、入団時は外野手としてだった。現在も「外野手登録」だが実際は内野を守るのがほとんど。今年もその状況は続くようだ。

「今年も登録は外野手だと思いますけど。別にそれはいいんです。まずは試合に出ないと。どのポジションも層は厚いですけど、打てれば出られると思っています」

1軍でプロ1号を放った昨季はファームで4番を任されることも多く、ウエスタン・リーグの最多安打(98)もマークした。大卒4年目の今季、ブレークしてほしい存在だ。昨季ファームの指揮を執っていた矢野燿大もそれを期待して1軍キャンプに連れてきているはずだ。

「そりゃあ出るためには自分はどこを守るとか言ってられないでしょ。どんなスキをついてでもまずは試合に出ないとね。そこからだよ。特に今年は誰がどこを守るか分からないんだから」。内野守備走塁コーチ・久慈照嘉もそう力を込めた。

西村とは意味合いがまったく違うけれど、やれと言われればやるのがプロの世界だ。逆に言えばどこでも守れるユーティリティーぶりで板山は勝負する。(敬称略)

阪神板山祐太郎(2018年11月1日)
阪神板山祐太郎(2018年11月1日)