スポーツマスコミに身を置いて50年近く。スタートは日刊スポーツの運動部だった。外勤初仕事はアントニオ猪木とムハマド・アリの異種格闘技戦。世界が注目した戦いを現場で取材したのではなく、テレビで見るファンの興奮を伝える仕事だった。大阪梅田の地下街での取材。何とも地味なスタートだった。

その後、大相撲、ゴルフ、バレーボールなどを担当したのち、プロ野球班に入った。そこからどっぷりと野球に漬かった。50年近く、新外国人選手も多く取材した。阪神と他の球団も合わせ、年に10人は新しい外国人選手が来日している。それが50年、合計にして最低でも500人の外国人選手を見てきた計算になる。

そらすごい選手もいた。特にバッターである。阪神にもいた。古くはブリーデン。岡田彰布がルーキーだった頃にいたリー・スタントン。彼はマリナーズのバリバリの4番打者。その飛距離にはぶったまげた。あとはロブ・ディアー、グレン・デービス、セシル・フィルダーら、さすがメジャーとうなったものだ(まったく働けない選手もいたが)。

ところが投手、特に先発投手に関しては、バリバリのメジャーリーガーというと、ほとんど記憶にない。タイガースではキーオとかメッセンジャーが実績を残したが、メジャーではなく日本で成功した投手。他球団でいっても、これという投手が浮かばない。かつて巨人にいたガリクソンくらいか。確かに彼はメジャーでの実績は相当だった。

バッターはすごいが、投手はそれほどでも。これが日本球界の常識であったが、今年、それが覆るかもしれない。そう、DeNAのトレバー・バウアーのことだ。これまでの外国人投手の誰よりも上回るキャリア。サイ・ヤング賞に輝いた投手は、やはりさすがであった。

最初はたいしたことはない…と見ていたら、日本に慣れてきてからか、特に交流戦では圧巻のピッチングを続けて交流戦3勝。DeNA優勝と躍進の立役者として、その存在はグンと大きくなった。

そのバウアーが阪神の前に立ちはだかる。6月23日から再開するレギュラーシーズン。いきなり阪神対DeNAの3連戦。首位攻防戦になる。その3戦目、DeNAの先発予定がバウアーとされている。

岡田はあまり興味を示さない。バウアーのことを聞かれ「コントロールがアバウトなところがあるやろ。高めの甘い球、そこを打てば」と、それくらいの印象を口にしているけど、言葉とは裏腹、バウアーたたきが重要な意味を持つことをわかっている。

躍進DeNAの象徴的な存在だけに、ここでガツンとたたいておけば、相手は落ち込む。1戦目の今永、2戦目予定の東ではなく、バウアー攻略が、この3連戦のキモになるということだ。

そこで岡田は手を打った。バウアーにぶつけるのが才木。相手が力なら、こちらも力で応じる。いま阪神で最も強い球を投げる投手、才木をマウンドに送り、バウアーを、DeNAをねじ伏せにかかる。これが岡田の今後をにらんだ戦略なのだ。

まだまだ星勘定する時ではない。ひとつ、ひとつ勝ちを積み上げる。それしかないけど、最初に訪れた「勝負時」ということを岡田は理解している。「長いシーズン、いろいろあるけど、ここは譲れないというか、勝負の時と思う節目がある」。長年の経験で、岡田はそれを敏感に察知する。それが6月25日ということになる。

打線に関しては前川や森下を起用するだろうと、いろいろにぎやかだが、まずは力勝負で、バウアーに投げ勝つ才木を、岡田はイメージしている。とにもかくにも佐々木朗希に投げ勝った才木なのだ。バウアーにも臆することなく挑むだろう。この日曜日、岡田が仕掛ける最初の勝負の局面。これは見ものである。【内匠宏幸】 (敬称略)