阪神の監督付広報担当は藤原通。コアなファンならご存じだろう。兵庫・神港学園から立命館大を経て、阪神に入団。1979年生まれだから44歳になる。
現役時代、目立った成績は残せなかった。その中で、少しは胸を張れる1本のヒットがある。それは2007年の東京ドームでの巨人戦。もつれた終盤、チャンスで打席に入った藤原は上原からヒットを放ち、これが決勝点になった。
ただ、この試合、クローズアップされたのが藤川球児だった。その日もマウンドに上がり、それが10連投目だった。「炎の10連投!」とスポーツ新聞は大きく取り上げ、藤原の記事はさほど大きくはなかった。
「いまの時代、10連投など考えられないですからね」。当時を思い出しながら、藤原と話していた横を、監督、岡田彰布が通り過ぎていった。
あの時、10連投を命じたのは岡田だった。当時、10連投はまれでも、連投は常識の時代。そうそう騒がれることもなかった。でも今の球界は違う。大きくシステムが変わり、リリーフの負担を極力減らす方向に進んでいる。
昔風の監督、岡田もここを意識している。「何連投とか、ないようにやりくりする。これはかなり気を使っている」と明かしている。
7月11日から始まった甲子園でのDeNA3連戦。首位攻防の重要な戦いで阪神はまず2連勝した(3戦目の結果は?だが)。特に12日のゲームは会心の勝利になった。サイ・ヤング賞投手のバウアーを最後に攻略してのサヨナラ勝ち。中でも光ったのが救援投手陣の奮投だった。先発大竹の後をつないだ浜地、島本、馬場、そして岩崎。彼らが0に抑えたことが、サヨナラ勝ちの要因。そして、その中に岩貞の名がなかったこともミソといえるのだ。
久しぶりに岡田としゃべり、聞いておきたいことがあった。これからの後半戦、やはりポイントはブルペンか? の問いに、彼は「もちろん」と即答した。ペナントレース、制するのはブルペンの強いチーム。これが岡田の変わらぬ考えだ。
前回の監督時、とにかくリリーフ陣をフル稼働させた。特にJFKはすごかった。しかし、これを現在に当てはめることはできない。20年近いブランクで、野球の進め方に大きな変化が生まれていること。これを痛感している。だから「大事に使う。無理はさせない」。特にベテランとされる投手には、かなり考慮しているのがうかがえる。
「岩貞、そして岩崎。この2人よ。ホンマ、エエ投球を続けてくれている。自信を持って、送り出せるから」と言いつつ、調子に乗ってはいけない…と、自分を戒めている。
7月11日の第1戦も、本来なら岩崎を投入してもおかしくなかった。だが終盤に思わぬ1点の追加点があったため、「あれで岩崎をやめた。形通りなら岩崎やけど、そこは無理させる必要はないからな」と舞台裏を明かした。
12日のゲームも計算できる岩貞を投入させたいところだったが、それだと岩貞が連投になる。それを避けるとともに、復調してきた浜地や安定感のある島本を、十分にまかなえるという自信のもと、マウンドに上げている。
「岩貞、岩崎には極力、無理をさせない。それでも戦っていけるのは、浜地、石井、馬場らの成長があるから」。苦しい戦いが続く中で、岡田ならでは手ごたえが日増しに高まっている。
今回、リリーフ陣のさらなる強化のため、新外国人投手の獲得が内定したとか。岡田はここについては「そんなに期待はしてない。それくらいでエエんやないか。期待して、違うかったら、ガクッとくるし。投げてみてプラスになってくれれば、という感じでいた方がな」。これもまた岡田流のゼロベースの考え方だった。
ひと昔前、とにかく球児、球児、また球児でファンから「藤川をつぶす気か!」とヤジられ、グラウンドとスタンドでやり合ったこともあった。まあ、そんな時代は過ぎ去った。投手の起用法も根底から変わった。岡田もそれをかなり意識して、進めていくことになる。【内匠宏幸】
(敬称略)




