サヨナラ勝ちで4連勝(7月28日)。ヒーローインタビューで森下の若さに満ちた声が聞こえてくる。ただ、そうこうしている間に「タイムリミット」は確実に迫っていた。
プロ野球におけるシーズン中の補強期限がそれで、リミットは7月31日。あと2日しかない。阪神のシーズン中のトレードは? 外国人選手の補強は? 現時点でその可能性は極めて低い。いや、それは「ない」と断言していい。水面下で調査を続けてきた球団。今回は見送りの方針を固めたようだ。
ライバル球団の動向を見る。ここにきて抜け出そうとする巨人の場合。途中加入したヘルナンデスに加え、新たにモンテスを獲得。この効果が出て、7月28日のゲームではチーム6点のうち、2人で4打点。実にタイムリーな補強になり、チームは勢いを増している。
これをみて、阪神も新外国人を…といった声が出ても不思議ではない。2年目を迎えたノイジー、ミエセスが1軍から消えて久しい。目下2軍で1軍復帰を目指しているが、目途は立っていない状況。監督の岡田彰布の頭には、この2人の外国人選手は計算に入っていない。
だから巨人のようなピンポイントの補強を…と考え、実際に調査、報告が繰り返されたが、見合う選手はいなかった。これについて監督に聞いたことがある。もちろんチームの極秘事項だから、具体的なアンサーはなかったが、ひとつ「ポジションの関係もあるから」と語っている。
内野に空きはない。あるとすれば外野のひと枠。だけど、そこには前川や野口という若手が育っている。目先の補強に走るのか、それとも若い力を戦いながら育てるのか。岡田の回答は明確だった。
ここまで90試合を戦い、得点力不足に苦しんできた。そこで安易に手っ取り早い補強に走るのか。監督はすでに腹を固めていた。「ここまで悪いとは…。それが本音だけど、逆にここまで我慢したわけだから。必ず底は抜ける。日本一になったチームなんよ。そのプライドというのかな。そういう気持ちを、みんなが持っているはずだから」。これによって、緊急補強より現有戦力で…の意思統一が球団と現場で確認された。
1年前と比較し、補強となったのはゲラと現役ドラフトで加入した漆原だけ。トレードはなく、ドラフトも即効性はなく、新人では石黒が唯一、1軍にいるだけ。ライバルチームは補強を行い、強化しているのに比べ、阪神はほぼ昨年と変わらぬ陣容。ノイジー、ミエセスの2軍で戦力的にはマイナスといった声もあった。
「ここからがタイガースの黄金期のスタート」と岡田は今年を位置づけて臨んできた。苦しい現実を突きつけられながら、それでも貯金をして、首位争いの中にいる。「戦い方を考えれば、よくやっているよ」と自己評価する監督。そこには選手と同じように、チャンピオンチームとしてのプライドがある。底を抜け、ようやく上昇の風が吹いてきた今回の連勝。7月31日、無風のままにタイムリミットは過ぎていく。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




