<イースタン・リーグ:DeNA7-12巨人>◇14日◇バッティングパレス相石スタジアムひらつか

日本ハム、ロッテ、ダイエーで21年間の選手生活を送り、その後はソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチなどを21年間(うち1年間は編成担当)務めた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(60)が14日のDeNA-巨人戦(バッティングパレス相石スタジアムひらつか)を取材した。高卒1年目ルーキーDeNA森敬斗内野手(18=桐蔭学園)の動きを、捕手目線で評論した。

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守備範囲が広くて、強肩で、かつ機敏な動きを見せてくれるものだと期待していた。ショートに入った森を見て、最も印象に残ったプレーは、その期待とは裏腹なものだった。

巨人に4点を先制されたあとの3回表1死満塁、打席には右バッターを迎えた前進守備という場面だった。バッターは、落ちるボールを左手で拾うようなバッティング。いい当たりとも、悪い当たりとも言えない微妙な打球が転がる。芯でとらえきれなかった打球は速くない、ただ、飛んだコースは良かった。

セカンド寄りのゴロに、森は飛び込まず、打球を見送るように感じた。記録はヒット。捕手の目線からすれば飛び込んでほしかった。俊足の森ならばもう1歩で届くように見えただけに、飛び込んでいれば止めていたはずだと映った。

4点差で1死満塁での前進守備。中前に抜ければ2点が入り、試合が決まってしまう。飛び込んで止めていれば、少なくとも失点1で済んだかもしれないし、素早く一塁に送球していれば打者走者はアウトに出来たかもしれない。もしくは、二塁封殺の可能性もあった。6点差になってなおも1死一、二塁と、5点差で2死一、三塁(もしくは二、三塁)ではまるで違う。

それに必死に飛び込んで「絶対に止めてやる」という強い意思が見えるのと、淡々と打球を見送ってしまうのでは、受け取る印象も相当な違いが出てくる。なによりも、やれる能力があってやらないのは、自分で自分の評価を下げてしまうことにつながる。それが実にもったいないと感じた。

2回裏、4点を追う攻撃で2死満塁で打席が回ってきた森は、1-2から低めのチェンジアップを空振り三振。それが脳裏にあったのかもしれない。ただ単に球際に弱いのか、もしくは、森は届かないという判断という可能性もあるだろう。

緩慢に見えたプレーだけですべてを判断することはしたくない。その一方で、選手であるからには、試合の流れを左右する大切な場面では必死に、がむしゃらにボールに食らい付く強い気持ちを持たなければ、チームメートからもベンチからも信頼されない。

センター前に抜けた打球を、巨人坂本、中日京田ならどう処理するか、頭の中でシミュレーションしてみた。恐らく、1軍レギュラーなら判断の早さから確実に捕球していたと思う。高卒ルーキーが届かないと判断した打球を、1軍レギュラークラスが経験と判断力、技術力で処理できるのは当然のこと。仮に中日根尾ならばどうか。昨年1年間、根尾を見てきた者として、間違いなくあの打球にはちゅうちょなく飛び込んでいたと、確信を持って答えることができる。

ぜひ、森のプレーをまた見たい。その時こそ、たとえ届かなくても猛然と打球に食い下がる姿を見せてもらいたい。成長するため、結果を恐れず果敢にチャレンジするプレーほど、ファームを見ていて心を揺さぶられるものはないからだ。(日刊スポーツ評論家)