<イースタンリーグ:日本ハム5-4楽天>◇13日◇鎌ケ谷

日本ハム、ロッテ、ダイエーで現役生活を21年間、ソフトバンク、阪神、中日などで2軍バッテリーコーチを21年間(うち1年間は編成担当)、計42年間をプロ野球で生きてきた田村藤夫氏(61)が、俊足として東都大学リーグで名前を売った日本ハムの大卒ルーキー五十幡亮汰外野手(22)の“足”に注目した。

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五十幡のストロングポイントが「足」であることは明確だが、試合の中でじっくり見ると、その武器の中にもいいところと、改善点が浮かんでくる。

初回、先頭打者の五十幡は楽天先発釜田の真ん中ストレートを右中間に運び二塁打で出塁。細川の進塁打で1死三塁。ここで打者石川亮の打球は詰まったセカンドゴロ。内野は前進守備だったが、ゴロゴーに感じた五十幡のスタートは非常に良かった。

打球がライナーになり併殺やむなしのギャンブルスタートというよりも、打球がゴロを確認してからスタートを切るゴロゴーという印象だった。二塁手が捕球した時点で本塁への送球をあきらめていた。それだけ打球判断、1歩目の速さが抜きんでていた。

スライディングせずに走り抜けた点はちょっと気になった。二塁手の動きから本塁送球はないと判断していたのならいいが、理由もなく走り抜けたとしたら、今後は野手の動きを見た上で判断すべき。しっかりスライディングをしないと、いつか失敗する可能性がある。

五十幡は石川亮の打席で、ファウルした時もいいスタートを切っており、前進守備でも、ゴロゴーでこれだけ楽々セーフなのは、脚力、反応が素晴らしいからだ。

第2打席は3回の先頭打者で粘って四球を選んだ。カウント2-2から4球続けてファウル。続く低めのチェンジアップをしっかり見逃し3-2。さらにファウルをひとつはさみ、最後は再び低めのチェンジアップを選んだ。11球投げさせて出塁したところに、自分に求められている役割をよく理解していると言えた。

1死三塁での内野ゴロでのスタートの良さ、そしてこの打席での粘りと選球眼の良さは、「足」があるからこその、いいところが良く出ていた。

直後、四球で出塁した五十幡は釜田が3球続けたけん制でアウトになった。2度けん制を続けられ、いずれも頭から帰塁していたが、3度目のけん制でやや右足が滑ったように見え、アウト。この場面、釜田からすれば11球も粘られた上に低めの変化球を見極められての四球。しかも足がある。マウンドでの落胆はあったと見えた。

五十幡を出塁させてしまった心理面、さらに足を警戒しなければいけないという点で、釜田の神経は五十幡へのけん制に集中していた。それが分かっていながら3度目のけん制でアウトになったのはとてももったいない。もったいないと言うよりも、この場面では絶対にしてはいけないミスだった。

仮に足が滑ったとしたのなら、それは準備不足だ。足場をならしておけば済む。2度けん制が続いた時に足場を確認しなければいけない。五十幡のこのような場面をもっと見ないと細かくは分からないが、けん制への反応が鈍いのかもしれない。三塁走者でのゴロへの判断は見事だったが、けん制への反応はまた別だ。

まず、俊足の走者に求められるのは、けん制で警戒される中での盗塁だ。五十幡はまず一塁走者としてプロのけん制への反応を磨き、その上で盗塁を安定して成功させてこそ、“足”は評価される。

周東は俊足で昨年ブレークしたが、執拗(しつよう)にけん制されても盗塁したからこそ、レギュラーをつかむまでになった。これからの五十幡も、マークされる中でけん制への反応を研ぎ澄まさなければならない。反応スピードを上げることもそうだが、投手の動きをよく観察することも重要だ。自分のスタートが研究されるのと同じように、投手のけん制時の動きを見ながら情報を集める作業が必要だ。

今の日本ハムは浅間、西川、大田、松本剛で外野陣をやりくりしているように映る。チームはなかなか白星に結び付かず、苦しいペナント序盤を送っている。外野で五十幡を使ってみるのもひとつのきっかけになると感じる。

先述した課題を克服した時、代走でも、守備固めでも一定の貢献はできるのではないか。日本ハムのチーム事情と、足がある五十幡の特性を考えると、今季中に1軍で試してみる価値はあると感じる。いつチャンスが回ってきても自信をもって走れるよう、ファームで鉄則を身に付け、来るべき時に備えてほしい。(日刊スポーツ評論家)

日本ハム五十幡(2021年1月17日撮影)
日本ハム五十幡(2021年1月17日撮影)