<イースタンリーグ:ヤクルト5X-4日本ハム(延長10回)>◇5日◇戸田
試合前、ヤクルトの全体練習後に「おやっ?」という場面にでくわした。高卒ルーキーでドラフト2位・西村瑠伊斗内野手(19=京都外大西)と、大卒ルーキーで同3位・沢井廉外野手(23=中京大)が、三塁と一塁で特守を受けていた。そして、すぐに試合開始にもかかわらず、その後は室内練習場で特打に取り組んだ。
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前日の同じカードも見ていたので2人のバッティングは覚えていた。沢井は4打数4安打1本塁打、西村は3打数1安打。いずれもいい感じで振れているな、という印象だった。
その2人を試合に使わずに室内練習場で打ち込みをさせる。ファームのコーチもしてきた私の経験の中では非常に珍しく感じた。ちょうど、2人の特守をGMの小川さんが見ていたので、一緒に見学させていただいた。
その雑談の中で、2人にはこの後室内練習でしっかり打ち込みをさせるという話だった。私はちょっと驚いた。昨日の試合で2人ともいい感じで打っていたし、ヒットも出ている。そして今日も試合がある。
私の感覚ならば、若手選手、特に新人選手は試合でどんどん経験を積ませたいところ。調子もいいのならなおさらのことで、そこで特守から、特打というメニュー、育成法が斬新であり、どういう意図があるのか、非常に気になった。
その後、小川さんとまた雑談するチャンスがあったので、そこの意図を聞いた。すると、小川さんは「数年前から、チーム内には強化選手という位置付けの若手を設け、その選手には状況に応じて体力強化という観点から、こうした取り組みをしている。特に西村は高卒ルーキーで、体力強化という意味合いがある」ということだった。
ヤクルトは村上に限らず、ある程度のスパンで強打者を育成してきた。山田や村上が代表的だが、塩見もパンチ力はあるし、最近でいえば長岡、内山らは中距離打者としては確実に成長してきた。
ヤクルトがそうした取り組みをしていた実情と、その背景を知ったのは、ここまでファームを取材して初めてだった。勉強不足と言われたらそれまでだが、こういうやり方もあるのかと、新鮮に感じた。
その上で、私なりに思うこともある。新人選手は試合でヒットが出れば、どんどん打ちたくなるものだ。やはり、打てば気分はいいし、結果を求めたくなる。
また、打てないと何とかどんな形でもヒットがほしくなり、必死になる。いずれのケースでも、結果と内容がしっかり一致していることが、若い選手にとっては非常に重要。
相手バッテリーの攻め方をしっかり頭に入れて対応した結果としてのヒットなのか。根拠があやふやなまま、たまたまヒットになったものなのか。
バッター有利のカウントでも、狙い球をしっかり打ったのか、そこまでのものはなくヒットになっただけなのか。非常に細かいところだが、そういう部分が選手にとっては非常に大切になる。
いい感じでスイングできて、結果も出ている時にこそ、その感覚を確実に身に付けさせるために打ち込ませる。それも、1つの方法なのだと感じる。結果が出ない時も特打は欠かせない練習だが、スイングのどこかに矯正ポイントがある時は、実戦でのヒットという結果が伴わないだけに、特打をしていても苦しいものだ。
好調な時、ある程度の心理的な手応えを持ち、時間をかけて打ち込むことは、好調時の感覚を体に染み込ませるという観点からも、効果的なやり方かもしれない。
少なくとも、そういう視点から若手、新人選手を育てよう、伸ばそうという創意工夫には頭が下がる思いがした。
現場を預かるコーチからすれば、いい時こそ、どんどん打席に立たせて、成功体験をたくさん積ませたいと思いがちだ。
ヤクルトのこうした取り組みは、トライアルとしても非常に興味深いし、着眼点としても大いに参考になる。
バッティングはいつ崩れるかわからない。そして必ずと言っていいほど、どんな強打者でも不振の時は訪れる。その時に自力で打開する際のヒントになるのは、好調時の感覚になる。
いい時の感覚を体に覚えさせることは、好調を維持するためにも、そして不調になった時、トンネルをいち早く抜け出すヒントにするためにも、有効なやり方になるのではないか。(日刊スポーツ評論家)





