100回大会の甲子園で、史上初となる2度目の春夏連覇の偉業を成し遂げた大阪桐蔭。3日まで行われていた福井国体で、「100回大会世代」は最後の公式戦を終えた。台風の影響で準決勝と決勝が行われなくなったため、福井国体は4校1位のうちの1つに。ラストも「優勝」で飾り公式戦41勝1敗、今年は29連勝という記録と記憶に残る強さを見せ続けた。

「打倒大阪桐蔭」を掲げる周囲の目やプレッシャーとも戦い続けた約1年。チームの中心となった3年生の9人は西谷浩一監督(49)と、交換野球ノートを続けた。主将の中川卓也内野手(3年)や副主将の根尾昂内野手(3年)ら前チーム経験者を中心に、お互いの考えを書いて読んで共有。ノートのタイトルは「本物 最高最強のチーム作り 日本一への道」だった。

当初は個々で書く野球ノートのように、個人の反省が書かれていることが多かったが、次第にチームについて考えた言葉が増えていったという。

偉業への挑戦が始まった夏の甲子園の初戦前日は山田健太内野手(3年)が担当した。「甲子園で100回目の夏がいよいよ始まる。夏をあらためて感じて大阪桐蔭の夏にするために、しっかりやっていきたい」。

春夏連覇に王手をかけた金足農との決勝戦前日は藤原恭大外野手(3年)の担当だった。「今日勝ったことで、春夏連覇に向けてあと1勝になった。球場の雰囲気もアウェーになるかもしれないが、自分たちがやってきたことを信じて春夏連覇する」。

今年2月から始まったノートは1冊が終わり、もう1冊ノートをテープで付け足して、約7、8センチもの厚さになった。青地斗舞外野手(3年)は「最初はうまく伝わるかどうか、どうやったら自分の気持ちが伝わるかを考えていた」と振り返っていた。藤原は1度書き終えたノートのページを「これでいいかな」と根尾に見せ、その意見を元に一から書き直していたこともあったという。それぞれの本気の思いがつまった言葉をかわすうち、「春夏連覇」へ向かうチームは次第に強固になっていった。

西谷監督が返すページにも、印象的な言葉が並んでいたようだ。「勝ちたいと思うことは大事だけど、思うだけでは駄目。思い続けることが大事」。夏を戦っていくうちに「去年の悔しさを晴らす時。2018年を桐蔭の夏にする」という言葉が増えたという。

誰もがこれまでなし得なかった偉業。辞書のような厚さになったノートには、その苦しみも喜びも、数え切れないほど刻まれていたのだと思う。

【磯綾乃】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

大阪桐蔭の3年生9人と西谷監督によって書かれた野球ノート。新しいノートが継ぎ足され、厚さは8センチほどになっている。(撮影・磯綾乃)
大阪桐蔭の3年生9人と西谷監督によって書かれた野球ノート。新しいノートが継ぎ足され、厚さは8センチほどになっている。(撮影・磯綾乃)
福井国体での大阪桐蔭ナイン(2018年10月1日撮影)
福井国体での大阪桐蔭ナイン(2018年10月1日撮影)