11歳の新入部員がV奪回のキーマンになるかも知れない。東京6大学リーグの慶大は9日、小学5年生の田村勇志君を受け入れた。横浜の選手寮で“契約書”にサインし、背番号6のユニホームを手にした勇志君は「ゲッツーの練習がしたいです」と誇らしげだった。

小児特定慢性疾患で、成長軟骨に異常がある。2年生の頃から入退院を繰り返してきたため、チームに所属して好きな野球をすることはかなわなかった。NPO法人「Being ALIVE Japan」のプロジェクトで入部。月数回程度、練習に参加する。

昨年の岩田遼君に続き2人目だ。郡司主将は「遼君が頑張っている姿を見て僕らも頑張ろうと思ったし、僕らの姿を見て遼君にも頑張って欲しかった」と振り返った。昨秋の早大1回戦で遼君は始球式に立った。慶大が勝ち、優勝に王手。だが、その後2連敗でリーグ3連覇を逃した。捕手でもある郡司は「遼君の球を受けて、うれしかった。今回も、そういう気持ちで終われたら」と、勇志君に新たな刺激を受けていた。

大久保監督は「コミュニケーションから学び、人間力を上げて欲しい」と望んだ。学生野球には、さまざまな立場の人がいる。郡司のようにプロを目指す者。チームを支えることに青春をささげる者。そして、勇志君のような少年。入団式では全員で肩を組み応援歌「若き血」を歌った。「一緒に優勝パレードができれば」と郡司。立場は違えど、同じ方向を向いていた。【古川真弥】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

慶大の背番号6のユニホームを手にする勇志君(左)と郡司主将(撮影・古川真弥)
慶大の背番号6のユニホームを手にする勇志君(左)と郡司主将(撮影・古川真弥)