広陵のグラウンドのスコアボードには神宮大会で星稜に敗れた時のスコアが掲げられていた
広陵のグラウンドのスコアボードには神宮大会で星稜に敗れた時のスコアが掲げられていた

甲子園をにぎわせたセンバツが終わり、高校野球の春季大会が全国で始まった。センバツ出場校の広陵は14日に広島県大会2回戦で如水館に3-5で敗れた。夏の広島大会はノーシードに決まった。

忘れられない負けがあれば、それは人を強くしてくれるはずだ。広陵ナインにはそんな試合がある。昨年11月の神宮大会初戦、星稜(石川)戦。好投手・奥川擁する星稜に0-9の7回コールド負け。新チーム発足から公式戦28連勝のチームが味わった初の黒星だった。全国でもトップレベルの投手の球威、キレに圧倒され、3安打11三振。手も足も出なかった。「あんな負けは初めてだった」とナインは口をそろえる。やりきれない悔しさだけが残った。

その負けがチームを強くした。広島に戻って、すぐのこと。悔しさからレギュラー部員がグラウンドで練習に入ろうとした時。「俺たちも走る」。控え部員たちだった。「控えのメンバーも『俺たちも走る。メンバーの負けはみんなの負けだから』と言ってくれた」と、中冨宏紀内野手(3年)はその思いがうれしかったという。「メンバーだけじゃなくて全員で戦っていることを自覚した」と秋山功太郎主将(3年)も話す。レギュラー、控えも垣根などない。団結力が生まれ、絆をより深くした。

唯一の負けを忘れたことはなかった。「弱いことを自覚して、みじめな負け方だったので」と中井哲之監督(56)の発案で、グラウンド後方のスコアボードに星稜戦のスコアを刻んだ。大敗の記憶を忘れまいと目に焼き付けた。

「打倒星稜」と意気込んで乗り込んだ今年のセンバツ。星稜は2回戦で敗退。広陵も2回戦で東邦(愛知)に2-12で敗れた。7盗塁を許し、投手陣も打ち込まれるなど、再び全国の壁を痛感することになった。

再戦の可能性が残るのは夏の甲子園。東邦戦で先発し、6失点したエースの河野佳投手(3年)は「夏に帰ってきて、悔しさをぶつけたい」と決意を口にした。負けを忘れない。その思いは夏の聖地へつながるはずだ。【望月千草】

東邦対広陵 東邦に負け渋い表情を見せる広陵・中井監督(右)と河野(2019年3月30日撮影)
東邦対広陵 東邦に負け渋い表情を見せる広陵・中井監督(右)と河野(2019年3月30日撮影)