プロ野球阪神でプレーした日本製鉄鹿島・玉置隆投手(33)が現役を引退した。今大会限りと決め、優勝目指して奮闘してきたが先発して4回2失点。最後の敗戦投手になった。

残った感情はやはり「悔しい」だった。「最後、どんな気持ちになるかなと思っていたけど、悔しさが勝っている。野球人だなと思う」。体は丈夫そのものだそう。むしろ「ここに来て上がっているくらいです」。もったいないようにも思えるが、後進に道を譲ると決めていた。

所属した4年すべてで日本選手権に出場。今大会も、10月26日のJFE西日本戦は先発して10回を5安打10奪三振1失点。相手先発で今秋ドラフトで日本ハムに1位指名された河野竜生投手(21=鳴門)に投げ勝った。元プロ選手としてはトップクラスの実績を挙げ「第一線」に返り咲いた。

「全国制覇を目指してきたけど、忘れてはいけないのは(全国大会に)出ること。それが会社や地域への恩返し。皆さんに笑ってもらいたい。その意味では100点満点かな」。4年間の社会人野球生活を振り返った。

04年ドラフト9巡目で阪神入り。実働11年間で1軍20試合に登板して勝敗なしの防御率1・95。右肘痛と闘い、育成契約、支配下復帰と、起伏の多いプロ生活だった。16年から新日鉄住金鹿島(当時)でプレーし、この2年はコーチ兼任で引っ張ってきた。

高卒でプロ入りしたため、社会人野球の世界はなじみがなかった。阪神を戦力外になり「野球に疲れていた」と引退を考えたが、阪神時代の先輩の藤川に背中を押された。「続けない理由がない。行ってみないと見えない景色があるよ」と言ってくれたという。藤川とは今大会中も会い「よくやった。お疲れさん」と、ねぎらわれたという。

今は、その選択に後悔どころか感謝しかない。

「誰かのために野球をやれれば負けないチームになる。僕はチームのためにというつもりでやってきた。スタンドを見たらお客さんがみんな知っている顔。社会人独特です。大の大人が高校生みたいにギャーギャーいいながら野球をやるのは素晴らしい。こんなに楽しい野球があるんだということを、皆さんにもっと知ってもらいたい。熱い野球なんです」。

高校から入り立ての頃を知る記者にとっては、この上なくうれしい取材だった。これからは社業に専念。「家族と幸せに暮らせたら、それだけでいいです」とやわらかく笑った。

33歳になった右腕は「いろいろな方に来ていただいて、本当にありがたいです」と、報道陣に深々と頭を下げてロッカールームに入った。【柏原誠】

日本製鉄鹿島対日本生命 2回裏日本生命1死一、三塁、古川昌平の投前スクイズを玉置隆が本塁へ送球するも野選となる(撮影・前岡正明)
日本製鉄鹿島対日本生命 2回裏日本生命1死一、三塁、古川昌平の投前スクイズを玉置隆が本塁へ送球するも野選となる(撮影・前岡正明)