3~4月に行われた第23回全国高校女子硬式野球選抜大会で初優勝した福井工大福井。史上初めて東京ドームで決勝が行われたことも話題になった。

優勝から1カ月半がたち、福井市の同校に練習取材に訪れた。男子とは少し違う雰囲気に新鮮さを覚えつつ、その熱意には男子以上のものを感じた。

4番を打つ山田恵外野手(3年)のスイングには驚かされた。800グラム超の中学硬式用バットを使う選手が多い中で、男子高校規格の900グラムをぶんぶんと力強く振った。

「春の大会は本当に楽しくて。全員で1つになれたことが楽しかったです。夏もああいう風に楽しく、甲子園で優勝したい」。日頃からベンチの雰囲気を大事にしているという。春の大会は接戦の連続。どんなピンチでも前向きな声かけを心がけ「楽しもう」「○○が決めろ」と盛り上げた。小2から始めた野球を続ける中で、性格もポジティブになれたという。

エース吉森みひろ(3年)は神戸弘陵(兵庫)との決勝で10回を1失点完投した。「今までで一番うれしい経験でした。練習はほとんどがつらいです。練習に行きたくないと思う日もあるけど、すべては日本一を取るために頑張っています。次は甲子園で日本一とみんなで言い合っています」。昨年に続き決勝が甲子園で行われる今夏の全国選手権大会の初制覇という新たな目標に掲げた。

女子野球の機運は確実に高まっている。プロ野球の西武、阪神、巨人が女子チームを立ち上げ、プレーの場が広がっていく期待感がある。「もっともっと、いろいろな人に知ってもらって、男子のプロ野球のようになってほしい」。吉森は、憧れを持てる女子プロ野球を夢見る。

東ここあ主将(3年)は「男子に比べたらパワーはないけど、劣っていない部分もある。女子ならではの雰囲気もある」と語った。彼女らに共通するのは発展の願い。東は「これからも野球を続けます。女子野球が広まっていって、その中心に自分が携わっていたい」と目を輝かせた。

男子の甲子園のような関心を集めるには、まだまだ時間が必要だろう。トップレベルが充実するには、競技人口や環境など裾野の広がりが不可欠だ。ただ、時代の変わり目で必死にプレーする彼女らの姿は、注目に値すると思う。【柏原誠】

優勝を飾り笑顔を見せる福井工大福井の選手たち(2022年4月3日撮影)
優勝を飾り笑顔を見せる福井工大福井の選手たち(2022年4月3日撮影)