米大リーグで100本以上の本塁打を打った日本選手は松井秀喜、イチロー、大谷翔平の3人だけだ。日米両方で100本超は松井とイチローだけ。今秋、日本で公に少年野球教室を行ったのは松井さんだけだ。

ゴジラが小学生に野球を教えたら、何を重視して伝えるのか。巨人、ヤンキースで活躍した松井秀喜氏(48)が15日、母校・星稜高校グラウンドで少年野球教室を行った。記者は松井氏と1歳違いで、休日に少年野球のコーチを務めている。同世代のスーパースターが、子供たちに何を言うのか。興味津々で金沢市に向かった。

松井氏はまず、キャッチボールの注意点を示した。投球時にバックスピン回転をかけることを説明。次に「強く投げたいと思ったら(軸)足に残した体重の力を使って」と手本を示しながら伝えた。子供は早く体を開いて投げがちだ。これは記者にとって、コーチとして悩みのタネだった。「開かないで投げよう」より「強く投げたいと思ったら(軸)足の力を使って」の方が、分かりやすく、ポジティブに捉えられるだろう。

打撃練習では両翼91・5メートルある球場で、柵越えの当たりを披露した。その後「強く打つのと正確に打つ、2つが大事」と日米通算507本塁打の極意を伝えた。強く打つためには「速くスイングする。手で速くするんじゃない。足で速くする。手より足の方が力が強いから」。しっかり踏み込んで体重移動しながら、腰を回す重要性を端的に示した。正確に打つためには「ボールを長く見る。長く見ればボールがゆっくりに感じる。芯に当てる。木のバットは芯で打たないと、さっきの僕みたいに詰まるから」。苦笑いも交えながら、明るい雰囲気で説明した。

上級編もあった。内角のさばき方について「(投球が)体に近いと選手はこうなる」と大きな体を縮めた。「左打者は左の肘をおへその前にピュッと入れる。そうすると詰まらない」。恩師長嶋茂雄さんばりに、擬音を使った表現で、肘の使い方を教えた。

技術の後は、メンタル面だ。質問コーナーで「ワールドシリーズではどんな気持ちで打席に入りましたか?」と聞かれた。09年MVPの答えは「どれだけ大きな試合でも、いつもと同じ気持ち。緊張はしない。いつもの練習と同じスイングをする。練習で普段からそれ(大きな試合)を意識する。そうすれば大きな場面でも緊張しない」。試合で緊張しない方法というよりは、練習から試合を想定しておけば、自然と緊張しないというアプローチを紹介した。

大打者への成長は、野球が好き、という原点が大事だったようだ。「少年時代、努力してできるようになったこと」を問われた時だ。「自分はどんな努力をしたのか分からない。バットを振ることが努力なら努力なんでしょうけど、努力したのかは分かりません。だんだん打球が遠くに飛ぶようになったのはうれしかった。何が原因かは分からない。ただ体が成長しただけかもしれない。練習したからかもしれない」と首をかしげた。

さらに聞いた。「努力したという感覚ではないのか?」。きっぱり答えた。「ないですね。努力したというほど努力していない」。松井氏は幼少期から高校まで、自宅でネットに向かってトス打撃を行っていたという。だが、それは努力ではないという感覚。好きだからこそ続け、いつの間にか遠くに打球が飛ばせるようになっていた。

記者は昨年、DeNAの担当を務めた。球団関係者に少年野球のコーチを務めると伝えると「小学生のうちは、とにかく野球が好きになるように、嫌いにならないようにするだけで十分だから。やらせ過ぎないように」と助言された。今回の松井氏取材で、あらためて痛感した。好きこそ物の上手なれ。【斎藤直樹】

2022年10月15日、野球教室で子供たちに打撃指導する松井氏
2022年10月15日、野球教室で子供たちに打撃指導する松井氏
2022年10月15日、野球教室で子供たちに打撃指導する松井氏
2022年10月15日、野球教室で子供たちに打撃指導する松井氏
2022年10月15日、野球教室でアップする子供たちを前にする松井氏(右から4人目)
2022年10月15日、野球教室でアップする子供たちを前にする松井氏(右から4人目)
2022年10月15日、野球教室でフリー打撃を披露する松井氏
2022年10月15日、野球教室でフリー打撃を披露する松井氏