高校野球の近畿大会が行われている大阪シティ信金スタジアムに出向くと、あちこちで体格のいい選手が忙しそうに動き回っていた。大阪体育大の硬式野球部の生徒たちだった。

彼らを引率した同大学の松平一彦コーチ(45)が説明してくれた。

「大学生の社会貢献活動みたいなものですね。みんながお世話になった高校野球。サポートしてもらっていたのが、サポートする側に回ることで何を感じるか。高校野球に違う形で携わって、勉強をしてもらえたらと思っています」

21年春まで履正社(大阪)で部長を務めた同コーチは、大阪府高野連と良好な関係にある。入道美之理事長や伊原登顧問(前理事長)と話す中で、互いのメリットが一致し、今回の選手派遣が決まった。聞くと、近年の大阪では例がないということだった。

今大会は1、2年生を中心に毎日15人ほどが参加している。仕事は駐車場の誘導から関係者ゲートのチェック、スタンド監視、パンフレット販売など。大会の運営補助はこれまで開催府県の選手や教員でまかなってきた。

入道理事長は「めちゃくちゃ助かっています。雑用にも嫌な顔ひとつせず、本当に気持ちいい。終わろうかと言いに行ったら『まだ仕事が残っています!』という選手もいました。卒業後に先生になる選手も多いし、将来また一緒に仕事ができたらうれしいですよね」と目を細めた。

ある2年生部員は「勉強になります。高校生のプレーを見るのはリハビリ中の僕にはモチベーションにもなります」と話してくれた。多くが教員を目指す同大学の学生には、とくに貴重な機会になることだろう。

他県でも同じ例はあり、和歌山の大会では和歌山大の部員が以前から運営補助に入っている。大学のリーグ戦や授業と重ならないことが条件になるが、ますます広がってほしいと思う。【アマ野球担当 柏原誠】