智弁和歌山のアルプススタンドには、ユニホーム姿の部員が1人だけいる。グラブを持ってファウルボールが飛んでこないか、スタンドを見渡し、ときには攻撃時に、前列でメガホンを手に、応援歌を歌う。
身長184センチ、87キロ、胸囲は100センチと遠目で見ても、目立つ体格だ。「自分からここを選んだんですよ」と明かすのは、メンバー外で今春練習補助員の和気匠太(わき・しょうた)投手(2年)。センバツでは、メンバー20人に加えて、全2年生5人が練習補助員として帯同中。ただ、試合中にグラウンド付近でサポートできるのは4人。記録員に三嶋健太投手、ボールボーイとして朝来友翔投手、久葉亮太外野手、坂本憲信外野手の4選手が戦況を見つめている。同校の場合は、練習補助員5人中1人だけがスタンドで応援をすることになる。和気自ら、センバツ全試合はスタンドに行くことを決断した。
センバツのメンバー発表日、自分の名前が呼ばれず「落ち込んだ」と振り返る。だが、それはその日だけ。切り替えは早かった。「落ち込む暇がないし、メンバーが甲子園でしっかりプレーして、日本一になるために、(補助員の)5人で『日本一のサポートをしよう』と話しました」。
現在は練習場のグラウンド整備や、打撃投手、ノックの走者役など、ひたすら練習相手になる。「サポートはいやじゃない。自分が(打撃投手で)投げて『和気ありがとう』と言ってくれるのがすごくうれしい。全力でサポートして、日本一になってくれるのなら」。
現在の大会期間は、“自分のため”の練習は後回し。それを苦としないのは、チームが勝つことを、今後のメンバー入りへのエネルギーに変換しているからだ。「こっち(アルプス)におったら、みんなのことを応援できますし、自分の気持ちも高ぶるので…。悔しさが増すので、いいかなと思います(笑い)」。
これまで和気がメンバーに入ったのは、背番号19で臨んだ昨秋の和歌山大会新人戦。夢は自らがひそかにライバルと掲げる、県内他校の同学年好投手と投げ合いの末に、チームを甲子園に導くこと。
今は仲間のために、地道かつ懸命に腕を振っている。まずは、準々決勝から決勝まで残り3試合、アルプススタンドから、誰よりも強く栄冠を願う。【アマチュア野球担当 中島麗】




