10年から19年までの10年ひと区切り(ディケイド)をテーマに阪神を分析し“猛虎の風説”について考える企画「この10年、阪神やっぱりこうやった!?」。

新しい年が明けた最初は「虎の4番は生え抜き不在?」。エースと4番打者は自前で育てるのがプロ野球の理想とされるが果たして…?

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「自前の選手なんて育ってないやろ。言うまでもないやん」。そんな声が聞こえてきそうな「阪神の4番」問題。00~19年の10年間に区切って見てみると。その通りの結果が出ている。フリーエージェント(FA)、外国人選手中心で戦ってきたことが分かる。

10~12年はFAで広島から獲得した新井貴浩がデンと座っている。生え抜きでは11年に関本賢太郎が2試合で4番を打っただけ。さらに13~15年はマートン、ゴメスの外国人選手が務めた。生え抜きでは13年に鳥谷敬が26試合で打っているが鳥谷自身も4番打者になじまない様子を感じさせていたし、タイプ的に考えても実を結ばなかった。

様子が変わってきたのは金本知憲監督が就任した16年から。原口文仁が持ち前の打力を買われ、5試合で4番を打った。さらに17年からは数多くの選手が4番を務めるようになる。17、18年はともに6人が4番を打った。

17年は大山悠輔、中谷将大、原口の生え抜き3選手が打っている。これは金本監督体制で「生え抜き4番を」という意識がはっきりと出た形だ。18年には陽川尚将も10試合で務めた。

そして矢野燿大監督に代わった19年、一気に変化が出た。開幕から4番に座った大山が108試合で重責を担ったのだ。結局、チームの途中低迷もあり、外国人マルテに譲る形になったが、将来への期待を感じさせる結果になったと言えるかもしれない。

今季、阪神は助っ人野手として新たにボーア、サンズの2人を獲得。勝負の矢野体制2年目へ向け、得点力不足にテコ入れをした形だ。ここで注目されるのが大山の立場だ。

阪神谷本球団副社長兼本部長は昨年オフ、大山の契約更改で「4番は死守してくれ」と伝えたことを明らかにした。大物打ちと期待する外国人をとっておいて、4番死守指令というのも酷な気がするが、それも期待の表れだろう。日本野球に慣れているという助っ人に対しての利点で大山がどこまで評価を上げるか。

阪神でも指揮を執った名将・野村克也は「4番は育てられない」という持論だった。4番という特別な打順を打つ選手はプロ入り後にコーチらが教えてどうこうすることはできないという話を聞いたこともある。そういう意味でも大山が真の4番になれるかどうか。注目されるポイントだ。【編集委員・高原寿夫】

◆19年セ界の4番は? セ・リーグのライバル球団は、日本人打者が順調に育ち、4番に座るケースが多い。昨季優勝の巨人は岡本が134試合で4番を務め、31本塁打94打点。DeNAは筒香が96試合で4番を張って29本塁打し、メジャー挑戦するまでになった。広島のチームリーダー鈴木は打率3割3分5厘で首位打者となり、108試合4番を担った。ヤクルトの4番はバレンティンが100試合務めたが、村上36本塁打、山田哲35本塁打と、次期4番候補がめじろ押し。中日はビシエドが134試合に入ったが、日本人最多本塁打は福田の18本塁打。4番出場はなかったが、阪神最多本塁打の大山の14本を上回った。