20年のキャッチフレーズ「It's 勝笑 Time! オレがヤル」を覚えている人はどのぐらいいるだろうか。勝利と笑顔を同列に置いて明るくやろうというイメージだった。コロナ禍で異例のシーズンとなったこともあり、なかなか明るさを感じるのは難しい日々だ。
指揮官・矢野燿大の表情からも就任1年目だった昨季のハツラツさは感じにくい。昨季は「矢野ガッツ」と言われたガッツポーズをよく見た。安打を放っただけで一塁に向かってガッツポーズ。選手もそれに応えた。一部から「過剰では…」と批判されることもあったが、続けた。
おとなしいチームに元気をもたらそうと指揮官自ら体を張っての行為だった。周囲からどう見られてもそれは構わないという覚悟があったと思う。
今季はなかなかそういう光景が見られない。マスクをしているから分からないと言えばそれまでだが、笑顔も昨季に比べれば大きく減っている印象。ベンチの奥に座り、じっと思考を巡らせている様子だ。
それが悪いというのではない。逆だ。「そりゃあそうだろう」ということだ。やればやるほど難しい勝負の世界。ましてや、かつて闘将・星野仙一が「よその何倍もきつい」と評した阪神の監督だ。ガッツポーズしている余裕はなくなってきて当然だ。
巨人の指揮官・原辰徳は昨季からその点について指摘していた。雑談に応じ、名将の視点として、こんなことを言った。
「(矢野は)明るくやってるよね。ガッツポーズつくって。でも選手時代はあんなじゃなかったよ。何とかして、どうにかして、こっちをやっつけてやろうと向かってきてたもんな。ギラギラしてたよ」
広島3戦目は勝てる試合を引き分けた印象だ。考えがあっての秋山拓巳の早期交代だったろうし、起用した選手にミスが出たのも最後は指揮官の責任。そんなことは矢野自身が一番、分かっているはずだ。
18日から東京ドームに乗り込んでの巨人戦だ。5・5ゲーム差なので仮に3連勝できても順位に変動が起こることはない。しかし本当にそうなれば巨人も安穏とはしていられないだろう。まずは初戦だ。1戦目に勝たなければムードは出てこない。エース菅野智之を攻略してこそ、巨人に緊張感を与えられる。名将の知るギラギラした矢野に戻って、食らいつけ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




