連日、阪神メディアをにぎわせている佐藤輝明、井上広大、そして育成選手ながら1軍キャンプに初参加している小野寺暖。いずれも近い将来の期待がかかり、このキャンプで注目される3人だ。この3人の「ある共通項」、熱心な虎党なら思い当たるかもしれない。

担当スカウトが同じ渡辺亮ということだ。2月10日で39歳になる渡辺。現役時代は中継ぎ右腕だった。徳島・鳴門市の出身で鳴門工から同志社大、日本生命と西のアマ球界を歩き、05年の大学・社会人ドラフト4巡目で入団。175センチと投手としては小柄で現役時代は体を目いっぱい使った投げ方を覚えている人も多いだろう。

引退した後はその経歴を生かしてか関西地区のアマスカウトとして活動している。それが近大の佐藤輝、履正社の井上、大商大の小野寺の獲得という結果につながっている。投手出身なのに打者ばかり獲得に成功しているのは面白いが、この3人にはもう1つ、共通項がある。

1軍戦に出るなら外野を守るだろうということだ。佐藤輝は内野手登録だが本職の三塁には主砲・大山悠輔がいる。現状で考えれば出場は外野だろう。つまり全員、関西出身の外野手ということになる。

「3人ともポジションがかぶってしまってますよね。数打ちゃ当たる…というわけではないですけど」。この日、宜野座でチラッと言葉を交わした渡辺は困ったように話した。

もちろん担当スカウトとしてはみんな活躍してほしいところ。だがそうはいかないかもしれないし、なかなか難しいところ。さらに小野寺についてはこんな見方をしている。

「枠は1つしか空いてませんからね。今、同じく1軍キャンプに来ている鈴木翔太との競争になるんじゃないですか。そうなったら、現状、投手の方が有利かもしれないし…」

渡辺の言う通り阪神は選手枠70人のところ、すでに69人が埋まっている。空いている枠はあと1つ。このオフ、中日から獲得した鈴木に対しては指揮官・矢野燿大も期待を寄せている。その点を気に掛けているのだろう。

こういう話を聞くとプロは厳しいとあらためて思う。「競争」と簡単に言うがそこに負ければ生活そのものに影響する場合もある。同時にその厳しさがファンを楽しませるプレーにつながる原動力なのは間違いないのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

井上広大(2021年2月3日撮影)
井上広大(2021年2月3日撮影)
6回表紅組無死、左越え本塁打を放ち、笑顔で生還する小野寺(撮影・前田充)
6回表紅組無死、左越え本塁打を放ち、笑顔で生還する小野寺(撮影・前田充)