0-1の翌日は9-8か。同じ1点差でもえらい違いだ。殊勲者は多いが、やはり、梅野隆太郎だろう。5回の決勝1号2ラン。「梅野復活」は優勝に欠かせないと思っているので、2度目のサイクル安打寸前の4安打はよかった。

ここで思うのは「なぜ梅野があれだけ打てたか」ということだ。そこに糸井嘉男の存在があったと思う。久々にスタメンで出ると2回に先制2ラン。これが効いた。西武バッテリーは試合中、ずっと糸井を気にしていた様子だ。直後の打者・梅野がそのスキを突いて打ちまくった。

前日はそこにロハスがいた。はっきり言って現状のロハスには結果が出る雰囲気がしない。相手投手も甘く見る訳ではないが少しは落ち着けるはず。そこで1死を取って次は梅野…と締め直してくる。そういう流れだった。

この日は出番に飢える糸井だった。そしていきなりの好結果。これがいい影響を与えたのではないか。これこそ本当の意味での「打線」だろう。得点圏打率トップの梅野自身、今季の好調打線に乗ってきたのだ。1人が良ければ全体にプラスにつながるし、悪ければマイナスになってしまう。

昨オフ、阪神は打撃力不足克服のためロハスを獲得。しかし、コロナ禍の影響で来日が遅れた。調整不足が続いているのか。うれしい誤算はマルテ、サンズの2人が想像以上に頑張っていることだ。新助っ人加入の刺激もあるだろう。その意味では効果があったが、現状、ロハスをスタメン起用するのは無理があるように思える。おまけにルーキー佐藤輝明が信じられないような働きを見せているので、いよいよだ。

大きな投資をして獲得したのだから、指揮官・矢野燿大にすればロハスを使わない選択は厳しいはず。それでも勝負に徹し、DH制のあるパ・リーグ本拠地試合にもかかわらず外した。それがいい結果に出た。意味のある「決断」だった。

それだけではない。大事な交流戦で村上頌樹、及川雅貴のルーキーを起用してきた。及川に白星がついたのはおまけとしても、この時期に新人に経験を積ませるのは大きな意味がある。これは攻めの采配だ。

これで交流戦は5割復帰。地元・甲子園での6連戦をいい形で迎えられる。特に週末のソフトバンク戦は「プレ・日本シリーズ」のつもりで、今季の強さを見せつけてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)