勝った-、勝った-、また勝った、よわい巨人にまた勝った-。コロナ禍のご時世でなければ甲子園からはき出された多くの虎党がほろ酔い加減のまま球場周辺、甲子園駅近くでメガホンをたたき、遅くまで騒ぐような試合だった。

これで貯金21、苦しむ巨人に8ゲーム差となった。巨人は3位転落。歓喜のゴールインにますます真実味が出てきたのは間違いない。それは事実だ。だけど、どうもなと思ってしまう部分も見られた。

「確かに“結果オーライ”の時期というのはある。優勝間近の9月末とかな。そういうときは勝ったら、それでエエんや。でもな、そのときが来るまでは結果オーライではあかん。そこを分かっておかないと」。これは闘将・星野仙一から03年によく聞いた言葉だ。阪神圧勝の試合を見て、その言葉を思い出した。

1回、2死一塁から岡本和真の右前打を右翼・佐藤輝明がファンブル。二塁で止まりかけていた走者の丸佳浩はそれを見て三塁まで進んだ。若い選手にミスは出るけれど、これは結構、厳しい失策だ。失点にならなかったからよかったが展開が違ったらガタガタいっていた恐れもあった。

さらに3回2死一塁だ。坂本勇人の遊ゴロを捕球した遊撃・中野拓夢は一塁へ送球しそうな気配から突然、二塁カバーの糸原健斗に送球。目線を切っていた糸原はこれを捕れず、走者を生かした。記録は糸原の失策で2死一、二塁。ここも後続なく、失点につながらなかったのは幸運だった。

攻撃面では7回だ。先頭マルテの当たりは左中間へ。しかし中途半端な走りで二塁へ向かったマルテは立ったままタッチアウトとなった。雨によるグラウンド状態も気になっただろうが、故障防止の面からも滑り込む場面だろう。

リーグ戦再開の巨人戦で打線がつながり、先発・西勇輝も粘りの投球を見せての快勝には違いない。しかし、その裏でわずか1試合の中で、これだけの“緩み”が出たことも事実だ。

明らかに阪神有利の情勢だが、まだ6月。オリンピックブレークもありそうだし、まだ分からない。そもそも守備にしろ、走塁にしろ、普段から心掛けていなければ、いざというときにできないだろう。優勝できても、その先には短期決戦があるのだ。星野が生きていれば、きっと言うと思う。「まだ結果オーライの時期とは違うぞ!」。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)