なんなら指揮官・矢野燿大には糸原健斗に対して「おまえ、今年本塁打、何本や?」と毎日でも確認してほしいぐらいだ。虎党なら分かると思うけれど。とりあえず1-0勝利はよかった。ヤクルトが異様な乗りなので直接対決前に負けるわけにはいかない。勝てたのはよかったと思う。

その上で少々さみしいかなと思う展開ではあった。決勝打はまたしてもマルテの1発。先発ガンケルが7回途中まで好投して最後は頼みのスアレスがぴしゃりときて3人でお立ち台だ。

期待して使っている選手なので活躍はいいのだが、正直、助っ人ばかりが目立つ。今どきの野球というか、もともと日本プロ野球で助っ人抜きは考えられないので、それが悪いわけではない。だけど比重が高いな、と感じるのも事実だ。

7回2死二塁になって中日ベンチは3番マルテを申告敬遠。大山悠輔との勝負を選んだ。一般的に「え~っ」とファンが大騒ぎする場面のはずだが、そんな感じでもない。5回もややそんな感じだった。これには矢野も「この悔しさをぶつけていく試合をつくってほしい」と言うしかない。大山の実力どうこうというより、現状の力関係を見られているということだろう。

そんな中、未来の光明になってほしいと思う起用があった。6番小野寺暖、7番佐藤輝明がオーダーに並んだ。野手が9人使える6月10日の日本ハム戦(札幌ドーム)で2人の同時スタメンはあったがリーグ戦ではこれが初めて。

サンズは2軍、上げたロハスに雰囲気がないので思い切ってこのメンバーにしたのだろう。両翼を守ったこの2人に中堅・近本光司が入れば、全員、地元関西出身、地元大学出身トリオの完成だ。このトリオで暴れてくれれば、と思ったが簡単ではない。

地元出身がどうしたと言われればそれまで。だがドラフトで獲得した地元出身選手を中心にしっかりレギュラーを組めれば活気が出る。長いスパンでのチームづくりも可能になる。

前カードの広島戦で1号を放った小野寺はこの日も二塁打を放ったが、まだここ一番で…という気配ではない。佐藤輝もトンネルから抜けられない状態だ。だが逆にいえば、若い2人を起用しながら勝てたのも事実。前監督・金本知憲も言っていた「勝ちながら育てる」状況だ。試行錯誤しながら、歓喜のゴールへと突き進んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)