いわゆる「懲罰交代」か。今季の阪神はこういうのが難しいと思ってしまう。開幕から遊撃のレギュラーだった中野拓夢が4回の攻撃で見逃し三振を喫した後、交代。中野は3回に先頭・吉川尚輝の何でもないように見えるゴロをそらし、立ち上がりから苦しむ藤浪晋太郎の足を引っ張る形になっていた。

3月30日の広島戦でも痛いミスをおかしていた中野。「シーズンでも競争」と言っている指揮官・矢野燿大にすれば「あかん」ということだろう。試合後、虎番キャップの取材に「気持ちを感じないんで。あいつの“気”が出ている感じがしない」と説明した。

矢野は就任以来、終始一貫してソフトムードだった。選手を厳しく指摘、指導するというより「もり立てていく」というポリシー。そういう言い方が正しいかどうか分からないが“今風”の監督だ。それからすれば今回の言動はちょっとめずらしいように感じた。

しかし、ここで気になるのは承知の通り、矢野は今年限りで監督を引くと公言している。誤解を恐れずに書けば、こういう状況に陥ったとき、ひょっとして「懲罰と言われてもな…」と感じてしまう人間もいるのでは、ということだ。

もちろん中野はそういう発想をする選手ではないと思うし、ミスを反省しているだろうし、何より誰が監督でも失策は許されない。矢野の恩師である星野仙一は厳しかったし、気合を入れていく言動はドンドンやっていけばいいと思う。

だが木浪聖也にしても小幡竜平にしてもエラーするときはする。現状、戦力的に考えて有効だと思うから中野をスタメンに選んでいるのだろうし、そこが難しい。好調時ならそれもいいかもしれないが開幕7連敗という異常事態の中、ムードがおかしくなって、それこそチームが“空中分解”してしまわないかなどと余計な心配をしてしまう。

そんなことを取り越し苦労に終わらせるためにもとにかく勝利が必要だ。連敗中でなければ「惜しかった」と思える試合内容である。先発は打たれたがブルペン陣が無失点でしのいだ。これは逆転劇の必須条件。はたして打線も徐々につながり、最後は大山悠輔が巨人のルーキー守護神・大勢に初失点をつける2ランが飛び出して、1点差まで迫った。トンネルを抜けるまであと1歩。選手みんなが殊勲を狙って、元気にやるしかない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 ベンチで浮かない表情の矢野監督(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 ベンチで浮かない表情の矢野監督(撮影・加藤哉)