勝った。巨人相手に2-1。今季初連勝は今季初の1点差勝利でもある。ここまで15敗のうち1点差で負けた試合は実に7つ。広島の指揮を執り、3連覇を果たした緒方孝市(日刊スポーツ評論家)は自身の経験から「1点差負けは監督の責任」と常々、口にする。その意味で指揮官・矢野燿大も今季初めて手応えを感じているかもしれない。

面白いのは前日と似かよった場面が展開された点だろうか。15日にキレのいい守備で3つの併殺を完成させた小幡竜平がこの日も8番二塁でスタメン出場。1点リードの7回に、やはり「4-6-3」の併殺を完成させた。その二ゴロを打った巨人若林晃弘は前日も2併殺打でツキがない。

さらに名手に似合わず、前日、2失策をおかした巨人坂本勇人がこの日も3回に適時失策。阪神はこれで先制に成功した。前日は佐藤輝明に逆転2ランが出て、この日は大山悠輔にチーム自体久々の適時打だ。打の主役が活躍しての連勝。打線爆発とまではいかないけれど、少しだけいい形になってきたかもしれない。

そこで思い出したのが前日、ヒーローインタビューで佐藤輝が言った言葉だ。「このまま波に乗って明日も明後日も勝ちたいと思います」。矢野が知人から色紙とともにもらった「波」という言葉にかけて、うまいこと言った感じだったけれど、少々、あわてた。

「明日も勝つ」というのは阪神にとって禁句だ。野村克也体制1年目の99年、新庄剛志が甲子園の巨人戦で決勝弾を放ち「明日も勝つ!」と叫んだ。そこから12連敗したのは有名だ。当時は担当記者。後日、新庄にそこを聞いたら「センスないですよ。そんなの…」とボヤいていた。

そんな記憶があるので「言うてしもた」と思っていたが勝った。虎番記者に前日の発言をもう1度、確認してもらうと「『明日も明後日も』と言ってますね」と教えてくれたのだ。なるほど。「明日も」ではなく「明日も明後日も」か。ちょっと違う。

とにかく今は勝つことだ。まだまだ借金12はダントツ。それこそ「明日も明後日も」の勢いで盛り返していかないと5割にも戻せない。17日はガンケルと巨人赤星優志の先発だ。前回3日、東京ドームで同じ先発の顔合わせで負けているが、その雪辱を晴らせるか。そして佐藤輝の言葉を“魔法の呪文”にできるか。まずはここからだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

4月15日、ヒーローインタビューに答える阪神佐藤輝明
4月15日、ヒーローインタビューに答える阪神佐藤輝明