打線爆発の10得点で連敗脱出だ。もう1度借金を返済して上位へ再発進…。そう喜びたいところだが正直、スッキリしない。それは佐藤輝明のプレーだ。

4-0の5回裏。先頭サンタナの当たりは右前へフラリと上がった。右翼・佐藤輝と二塁・山本泰寛が追う。微妙なときは前進してくる外野手が優先。それに従って山本は早めに佐藤輝に任せたように見えた。

ところが佐藤輝は目測を誤ったような感じでこれを捕れず、安打にしてしまう。グラブに触っていないこともあり、記録は二塁打だったがやはりミスだろう。

これで無死二塁となり、そこから西純矢がヤクルト打線に連打を浴びて2失点。最後は開き直って気迫の投球でピンチをしのいだものの危うく試合の流れを変えかねないミスだった。佐藤輝は7回にダメ押しの2点適時打を放ったがそれで「帳消し」ではない。

自分自身もその意味は分かっていたはず。あまり表情を変えないタイプだが「しまった」という表情を浮かべていた。何といってもまだ2年目。しかも指揮官・矢野燿大の方針で右翼と三塁の位置をしょっちゅう入れ替わって守っている。守備を熟練できない状況もある中で、ミスを責めるのは酷かもしれない。

だが強調したいのは佐藤輝は普通の選手ではないということだ。2年目にして4番を任されている。その存在なしにチームを語れない選手だ。だからこそ油断したようなプレーを見せるのは佐藤輝個人と言うよりも、中心選手としていただけない。

来季、監督が代われば佐藤輝の守備は固定されると思う。しかし、そうなれば守備もうまくなる…という簡単なものでもない。どこを守ろうと「捕れる球は捕る」というのは基本だ。

繰り返すが佐藤輝は阪神にとってかけがえのない選手。チームがコロナ禍になる中、まだ感染を避けている“強運”もある。だからこそ、試合中は一瞬たりとも気を抜かずに戦ってほしいのだ。

久しぶりに打線がつながったが、そういう翌日は要注意だ。佐藤輝は今季の巨人戦打率が2割3分1厘と5球団別でワースト。さらに東京ドームでも2割1分9厘でセの本拠地球場でワーストだ。大事なAクラス争いの巨人戦。ここはそれも一気に払拭(ふっしょく)して「阪神の4番打者」らしく攻守で輝いてほしいと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 7回表阪神2死満塁、佐藤輝は右前適時打を放つ(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 7回表阪神2死満塁、佐藤輝は右前適時打を放つ(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 7回表阪神2死満塁、2点適時打を放つ佐藤輝。投手今野(撮影・狩俣裕三)
ヤクルト対阪神 7回表阪神2死満塁、2点適時打を放つ佐藤輝。投手今野(撮影・狩俣裕三)