勝つときは簡単だ。もちろん、そんなはずはない。それでも先制されてもすぐ追いつく、欲しいところでダメ押し弾も。こんな試合がもっとできれば。そう思ってしまう中日最終戦だ。最後に勝ち越しを決めて指揮官・矢野燿大は1年目の19年こそ負け越したが、その後は3年連続で勝ち越し。古巣へ、きっちり“恩返し”できた格好だ。

まさかの開幕9連敗で始まった今季も残り10試合のところまできた。現状「借金2」。5割以上で終えるには6勝4敗が最低ラインだ。矢野阪神としては3位になった19年の「貯金1」がワースト。同様になるには7勝3敗以上が必要だ。

9月も中旬へ。以前なら消化試合だが今はクライマックスシリーズ(CS)がある。この10試合にもそれなりに意味があるのだ。そこには結構“重要”なものも隠れていると見ているし、少し考えてみたい。

残りゲームは首位ヤクルト、広島と4試合ずつ。DeNA、巨人と1試合ずつの計10試合。重要になるのはもちろん13日から甲子園で戦う広島戦だ。現時点で4位広島と2ゲーム差。3位を死守するためには4戦で最低でも2勝、できれば3勝はしたい。そうは言っても広島は今季もっとも苦手にしている相手だ。4敗してしまえばBクラス転落の線は濃い。まずはいきなり正念場の2試合となる。

ほんの少しだけ面白いと思っているのがヤクルト戦だ。甲子園で2試合、そして敵地・神宮で2試合。首位ヤクルト相手には今季ここまで9勝12敗と「借金3」。4つ全部勝てば勝ち越せる。それ以上に注目されるのは神宮での勝率だ。

ここまで10試合で5勝5敗のタイ。これまでの経験から阪神は神宮が得意でないと思っていたが、今季は違う。阪神がこのまま3位ならCSのファーストステージはおそらく2位DeNAとだろう。19年と同じ顔合わせ。19年はそこで勝って、巨人とのファイナルステージに進んでいる。

横浜スタジアムでは弱い今季だが、万が一、3年前と同じになればCSファイナルは神宮決戦だ。現状、公式戦最後は27、28日の神宮2連戦。そこでもしっかり戦えば…。いいイメージでファイナルに臨み、大どんでん返しの日本シリーズ進出…なんていう可能性もゼロではない。いずれにしても矢野阪神の集大成。成果も課題も、しっかり見届けたい10試合だ。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 6回裏阪神1死満塁、代打のマルテの左前2点適時打で生還した佐藤輝(左)を迎える矢野監督(撮影・前岡正明)
阪神対中日 6回裏阪神1死満塁、代打のマルテの左前2点適時打で生還した佐藤輝(左)を迎える矢野監督(撮影・前岡正明)
阪神対中日 中日に勝利しスタンドにあいさつする矢野監督(撮影・加藤哉)
阪神対中日 中日に勝利しスタンドにあいさつする矢野監督(撮影・加藤哉)