阪神球団は「ポスト岡田」をしっかり検討していかなければならない。新指揮官誕生の日に水を差すつもりはさらさらないが、これは当然のことだ。

15年ぶり再登板となった新監督・岡田彰布を中心に18年ぶりのV奪還を狙う来季。目前に迫ったドラフト、新外国人選手のピックアップ、トレード戦略など岡田をバックアップするのは球団、フロントの仕事だ。

同時に思うのは球団として指導者の流れをどうつなげていくか検討するのは重要ということだ。今回の岡田誕生劇はスムーズではなかった、とされる。すでに報じられており、日刊スポーツでも9月28日付の紙面で虎番キャップ・桝井聡が「解説」で書いていた。

球団内部では今季までの2軍監督・平田勝男の昇格案で固まりつつあったが親会社である阪急阪神ホールディングスの意向は別だった。「勝てる監督」として求められたのが岡田-。そういう話だ。それは金本知憲、矢野燿大と続いた“若手OB”による育成重視路線とは趣の異なる決定という気はする。

ここ数年で阪神は若返ってきた。ドラフトも成功していると言えるだろう。投手力はともかく打撃、守備ともちろん課題も多い。それでも顔ぶれを見て他球団と遜色ない戦力というところまで来ているかもしれない。だからこそ経験の多い岡田で勝負という判断だ。

何より「ザ・阪神」の人物だ。楽しみでもある。だがこちらが知る限り、岡田は潔い男だ。世間の想像する以上に熱いものを持っている。それがうまく作用し、優勝できれば、これはもう最高だろう。だが、そう簡単とは思わない。2年契約だが、その間に結果が出なければ岡田は潔く去るはず。そう考えている。

「監督? まさか」。そう言うOB、特に若手は多い。「みんなやりたいのでは」。そんなふうに思っている虎党にとっては意外だろうが監督就任に前向きな人を知らない。こちらが知る限り、岡田だけだ。12球団でも独特の存在。ファンが、メディアが、世間がうるさい。だがそれだけが理由だろうか。監督として貢献したい球団と思われるかどうか、そこも大事だろう。

新井貴浩を新監督に迎えた広島は次も、その次も監督を任せられるOBが控えていると見る。阪神はどうか。岡田阪神への期待と同時に、球団が内省を踏まえ、近未来への検討を続けていくことは重要だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

就任会見で笑顔を見せる左から阪神タイガース藤原オーナー、岡田新監督、百北球団社長(撮影・上田博志)
就任会見で笑顔を見せる左から阪神タイガース藤原オーナー、岡田新監督、百北球団社長(撮影・上田博志)