恒例の流行語大賞で「知らんけど」がノミネートされ、思わず笑ってしまった。大阪人、関西人なら誰でもなじみのある言葉。こちらも口癖のように使う。最近、若者を中心に東京でもよく使われている、というのが理由だとか。

責任回避の保険を掛けるセリフと言うよりは、どちらかと言えば「自分はそう思うけれど、それが正解かどうかは分からない」という感じが当たりではないかと思っている。

そこで思い出すのが15年ぶり復帰で注目されている阪神の新指揮官・岡田彰布だ。この1日も少しビックリした。西武からFA宣言した森友哉の獲得について虎番記者から質問された際の答えである。

「いや、全然考えてない。そんなん、いらんよ。せっかくチーム若なってきたのに。年寄りいらんやろ。年寄りかどうか分からんけど」。森友哉は27歳なので“年寄り”ではない。ひょっとして岡田の感覚では「FA=ベテラン」という構図なのかもと思った。

しかし、そこはかなりの頭脳派である。最後に「年寄りかどうか分からんけど」というフレーズを付けることで最低限の礼儀はわきまえた、ことになるのかもしれない。これぞ「知らんけど」の活用である。

一部に「失礼では」という声もあるようだが、岡田の本意はこのオフ、左打者、特にFAでの補強はしないということだろう。以前から「阪神は優勝できる戦力」と公言。重要視しているのは右打者なので、ある意味、自然な結果だ。

就任決定以来「岡田語」の露出はなかなか激しい。ずっと評論家として現場に足を運んでいたのでベテランはもちろん、若手の記者たちもほとんどその様子は知っている。「岡田語」についても結構、マネしているのは事実だ。

有名な「そらそうよ」はもちろん「そんなん知らんの?」「はっきり言うて」、コアなところでは「こわいわ」「やってしまいましたな~」など、すぐに浮かんでくる。どれも古い大阪人なら日常的に使用する言葉だが、そこに岡田の独特のキャラクターが相まって不思議な味わいを醸し出しているのだ。

若い選手、特に関西出身ではない選手は理解するのに少し時間がかかるかもしれない。それでも世代ギャップを乗り越えて来季、阪神が優勝すれば「そらそうよ」あたりが流行語大賞にノミネートされるのは間違いない。知らんけど。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

守備練習で自ら手本をみせる岡田監督(撮影・上山淳一)
守備練習で自ら手本をみせる岡田監督(撮影・上山淳一)