岸田行倫か。伏兵と言うべきか、失礼を承知で言えばそれほど警戒していなかった選手だろう。そこにサヨナラ弾が飛び出すから野球はおそろしい。近本光司の先頭打者弾で始まり、最後は巨人の代打・岸田のサヨナラ本塁打で終わった。ともに大阪ガスOBで兵庫出身。共通項のある2人が目立った試合になった。

それにしても、いかにも東京ドームというべきだろうか。甲子園なら右中間を破る二塁打…という感じの当たりが飛び込んでしまう。岸田がばっちり関西弁でインタビューを受けていたのも新鮮だった。

そこで思ったのは、いま1軍にいない“兵庫出身者”のことである。西宮出身、仁川学院から近大、そしてドラフト1位で阪神入り。経歴を書いても仕方がないが言うまでもない佐藤輝明、その人である。

この日は夜に甲子園で行われたウエスタン・オリックス戦で3安打を放つなど活躍していた。試合は高寺望夢のサヨナラ弾で勝利。こちらは文句なしの1発だった感じである。

佐藤輝をあらためて思い出したのは相手先発が戸郷翔征だったからだ。今季8勝をマークする戸郷。この日を含め、阪神戦は2勝負けなしだが3試合で本塁打を放った選手はこの日の近本を含め、2人だけ。もう1人は佐藤輝だ。4月26日の4回戦(甲子園)で右翼席に放り込んでいる。

指揮官・岡田彰布も話していたようだが佐藤輝は不思議な選手だ。打たんなと思っていると結果を出したりする。分かりにくいタイプだ。独断と偏見で言わせてもらえば大リーグで苦闘中の藤浪晋太郎と重なってしまう部分もある。

スター選手として説明できない風格があるし、2軍ではやはり格が違う様子。ファーム調整するより1軍での対応を研究する方がいいのかなという気もするが、そこがなかなか難しい。

いずれにせよ本塁打数「35」はリーグ5位の阪神。数少ない1発を放てる選手として、やはり佐藤輝は貴重だ。今回は無理だが8月には東京ドームで6試合ある。やはり早めの復調、復帰が期待されるのだ。

悔しい敗戦だが戸郷に143球を投げさせ、白星をつけなかったことだけは評価できるかもしれない。「チャンスは作れてたわけやからな。ええ投手、そんな悪くないやろ。そんなに打たれへんて。点取れへんて」。岡田の言葉通り、ここは切り替えていきたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)