痛い敗戦だ。指揮官・岡田彰布は長く取材時間の取れる甲子園の試合後としては今季初の取材拒否に出た。その気持ちも分かる…と書けばせんえつだが、途中まで岡田の好きな試合展開だっただけに、より立腹したのだろうと想像する。
若い森下翔太、前川右京の安打で幸先よく先制に成功。しかしスクイズなど細かい作戦で3回に逆転された。だが内野ゴロの間の得点など渋い攻撃もあり、梅野隆太郎の幸運なイレギュラー適時打で4回に逆転に成功したのである。
さらに8回には中日ブルペン陣の乱れから、ここも無安打で1点を加えた。はっきり言って派手さはまったくないが、スルスルと勝つという岡田の好きなパターンのはずだった。
それが崩れたのが9回だ。2点リードで登板したのは現在、抑えを務める岩崎優でなく同じ左腕の岩貞祐太。理由はともかく岩貞も好投手だ。しかし最初の打者である代打・福田永将に四球を出してしまう。この瞬間、モニターに映った指揮官・岡田はなんとも苦い表情を浮かべる。その顔を見て、思い出したのは闘将・星野仙一の言葉だ。
「先頭打者の四球は得点になるんや。野球100年の歴史やぞ」。優勝した03年、星野はそう繰り返し、戒めた。鋭い打球を打たれても好守備でアウトにできるかもしれない。だが四球は黙ってワンベースだ。バックのムードもなえ、そこから失点するケースが多い。そういう話である。
そうは言っても打たれるのは仕方がないし、四球も出すときは出すだろう。それでも状況、タイミングがよくなかったということだ。「頼んだぞ、岩貞!」。そのムードの中で登板し、いきなり、やってしまった。悪い予想は当たるものでそこから阪神は坂道を転げ落ちたのである。
先発で好投した才木浩人の白星がフイになったのは言うまでもなく、イレギュラー打球など阪神にほほ笑んでいた「幸運の女神」もそっぽを向いてしまった。延長10回には14試合連続で出ていなかった失策も特に熊谷敬宥のものは不運とは言え、一気に2つ出た。
たった1つの四球から流れが変わる「野球のこわさ」。多くの指揮官が感じてきたそれがまざまざと出てしまった中日戦だ。DeNAも広島に負け、2位とのゲーム差は変わらなかったとはいえ、もう繰り返したくない試合…と感じて仕方がない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




