前日の打ち疲れか? 阪神打線はソフトバンク東浜巨からの継投の前に単打6本に終わり、0点負け。休養のため近本光司、大山悠輔の主力を外したとはいえ、寂しい結果に終わった。

そんな中「なるほど」と思わせたのが糸原健斗だ。8回2死一塁で代打に出るとソフトバンク・オスナからしぶとく右前に安打を放ち、虎党を喜ばせた。

糸原は大逆転勝ちとなった前日も7回にオスナから代打で右前打を放っている。同じことを書いて申し訳ないが、なにしろ相手は推定年俸10億円「球界最高年俸」のクローザーだ。そこからの2試合連続安打だ。

昨シーズン防御率0・92のオスナは170人の打者と対戦し、被安打は「28」だった。その中で2安打を許した選手はいたのだろうか。記録部に調べてもらうと2人、いた。

ロッテ角中勝也 2本

日本ハム 五十播亮汰 2本

ヤクルト内山壮真 2本

角中は同年7月24日、千葉でのゲームでサヨナラ2ランを放っているが、いずれにしても同じ打者には3本以上は打たれていない。そんなオスナから連日の安打は、やはりしぶとい打者と言える。

「そうなんですか? でもオープン戦ですから。与えられたところでやるだけ」。まだ喜ぶ時期ではないとばかり、糸原は口数少ない。ちなみにオスナの年俸については「○○億?」知っていたのはさすがだ。

お金の話を続けるのは昨年12月にあった糸原の契約更改を思い出すからだ。38年ぶり日本一で球団職員にも特別ボーナスが出た阪神にあって糸原は減俸となった。推定1000万円ダウンの7000万円。一般人からすれば、それでもすごいのだが日本一での減額は皮肉だろう。

「下がるのはボクぐらいでしょ」。糸原もそう苦笑していたものだ。常時1軍ベンチ入りしていた顔ぶれからすれば確かにそうかもしれない。それでも存在感はある。レギュラーでこそなくなったが「なんとかしてくれる」という代打であり、若手の見本、ミエセスら外国人選手をリラックスさせる役回りも持つのだ。

ズバリ、将来の指導者候補だろう。それでも現役である以上、それだけでは面白くないはず。連覇を目指す今季こそ、ベンチから佐藤輝明ら内野陣に「オレもいるぞ」とジッと目を光らせる存在であり続けてほしいと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)