松山のスタジアム、記者席は序盤から緊張が走っていた。先発・才木浩人の好調は際立っており、気が早い記者(私を含め)は「これはやるんちゃうか」などと無安打無得点試合への期待が高まっていた。
「期待」と書いたが大記録達成なら、担当記者には「いい記事を書かなくては」というプレッシャーがかかる。6回に途切れたときはなんとも言えない空気が流れたのも事実だ。
それでも才木は7回無失点の好投。今季初勝利をマークした。打っては6回に「新打線」となった3番・森下翔太からの長短打併せて5連打でヤクルト奥川恭伸をKOするなど4得点の圧勝である。
6年ぶりの松山登場となった阪神。ヤクルトのキャンプ地の1つでもあり、スワローズ・ファンも多いが虎党も負けておらず、歓喜に包まれた。これで「貯金1」。混戦のセ・リーグから脱落しないためにも大きな勝利と言えるだろう。
だが、どう見ても阪神ムードの試合の中で、まるで“エアポケット”のようなシーンがあったのを野球ファンなら見逃していないのでは…。それは1点リードしていた4回表、阪神の攻撃時だった。
一走に四球を選んだ大山悠輔がいた1死一塁の場面。ここで7番に入っていた梅野隆太郎との間でヒットエンド・ランが行われた。梅野の打球は右翼へのハーフライナー。落ちて安打になるかどうか微妙な当たりだった。
これをヤクルトのライト・丸山和郁が前進してキャッチ。このとき大山はすでに二塁を回りそうなところまで進んでいた。ボールは一塁に転送され、あっけにとられるような併殺となったのだ。足で仕掛けているので懸命に走るのは当然だが、打球への確認、判断も重要である。
「あそこは判断力というか判断の遅さというかね。まあ、あれは戻ってほしいですけどね。打球は見ていた、と(大山は)は言ってましたけど。風で落ちるかどうかというのも難しかったのかな。まあ風が強い日は集中力がそがれる部分はありますけど。ああいうプレーは大きいですよ」
総合コーチの藤本敦士はそう振り返った。この日の試合前には右から左へ風速5メートルの強い風が吹くのが確認されている。それが影響したのかどうか。いずれにしても勝ち試合の中で反省しなければならない部分だとは思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




