好ゲームを展開したが、力尽きた。初戦に勝ち、日本シリーズとしては初めて福岡で勝利をマーク。だが多くの虎党が詰めかける本拠・甲子園でまさかの3連敗だ。ソフトバンクの前に日本一の夢はついえた。

シーズンから指揮官・藤川球児の選手起用は特徴的だった。特に目を引いたのはこれまで陰に隠れていた選手たちに日の目を見させたことだろうか。熊谷敬宥、高寺望夢、豊田寛、さらに中川勇斗など前監督・岡田彰布の時代にはほとんど活躍の場がなかった選手たちを積極的に起用した。

逆にこれまで主力だった選手たちにベンチに置く。梅野隆太郎、木浪聖也というところだろう。原口文仁は引退となった。

オールド・ファンからはその作戦を指摘されることもあった。シーズンを圧勝したので、その声が大きくなることはなかったが、首をひねりながら見ていた虎党を多数、知っている。

そんな話を球児と雑談していたとき、笑いながらも、ふと本音のようなものを漏らした。こういう言い方だった。

「現役時代から真っすぐばっかり投げてね。周囲からあまり真っすぐ投げるなって言われても投げてきたんですよ。オレは」-。

自分がこうと決めたら、誰が何と言おうとそうする。揺るぎない信念を持ち、指揮官として努めていたのだろう。ドラフト1位入団ではあるけれど決してエリートではない。阪神で結果を出し、大リーグに挑戦したが成功しなかった。そこから、まさかの独立リーグでプレー。そして阪神に復帰し、今シーズン、監督になったのである。

「運命ですよね」。自分の歩いてきた道を振り返り、そう言ったこともある。それで就任1年目にぶっちぎりでセ・リーグを制覇。CSファイナルも3連勝で突破した。だがソフトバンクの壁は高かったとしか言いようがない。

それでも、こんなことを書くと虎党には怒られるかもしれないが、ここで首尾よく日本一になれなかったことは、ある意味で、よかったのかもしれない、そんな気もしている。

1年目から日本一となれば、それをキープしない限り落ちていくだけだ。だがこれで来季以降への大目標ができたとも言える。甲子園で1つは勝ってほしかったけれど、これも運命か。25年の戦いを終え、球児はもう来季を見ているはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ソフトバンク 試合後、阪神ファンにあいさつし引き揚げる藤川監督(右下)ら(撮影・江口和貴)
阪神対ソフトバンク 試合後、阪神ファンにあいさつし引き揚げる藤川監督(右下)ら(撮影・江口和貴)