長く低迷していた阪神をよみがえらせ、今に続く強いチームとしての基礎をつくったのは、やはり、闘将・星野仙一だと思っている。就任2年目の03年に18年ぶりセ・リーグ制覇を果たしたのは今も色あせない記憶ではないだろうか。
その03年、阪神が強くなった要素は数限りなくあったが、その1つに「捕手の補強」もあった。すでに正捕手は矢野輝弘(当時)で決まった…と我々、虎番記者は思っていた当時、闘将は新たな勝負に出た。
暗黒時代に主力打者として活躍していた好打者・坪井智哉をトレードに出し、日本ハムから捕手の野口寿浩を獲得したのだ。正直、必要かなという印象もあった。結果として、意味ある補強となったのである。
02年シーズンも阪神には優勝のチャンスはあった。だが脱臼や骨折といった矢野の故障がV逸に影響したという見方もできる。それだけ捕手は重要なポジションなのだ、ということをあらためて考えさせた。
そこで野口の獲得だ。先日、当時を特集して放送されたNHK-BSの番組で、矢野は「星野さんはそういうことをするんですよ」と苦笑で述懐していた。当時、正捕手の座を渡すものか、と取り組んでいたことを思い出す。シーズンでは矢野の休養日に野口を起用する形になったが、これは誰にとってもよかった。
03年は藤本敦士(現コーチ)と「恐怖の下位打線」を組んだ矢野の活躍は、この競争意識も影響したと言える。緊張感を与えると同時に故障などのリスクヘッジを行った星野の采配だったのだろう。
そんな昔話を思い出すのは、もちろん、伏見寅威の加入があるからだ。この日、伏見の入団会見が行われた。少し緊張しながらも35歳、阪神野手最年として落ち着きも感じさせた。
先日、島本浩也とのトレードが発表されたとき、驚き、このコラムでも触れた。何より「来るのが伏見なのか」という思いは強かった。現在の阪神は坂本誠志郎を中心に梅野隆太郎がバックアップ、若手が控えるという形ができつつある。
そこに梅野、坂本より年長の伏見の加入だ。これがどう出るのか。故障者の備えということはあるだろうが、誰をどう起用するのか、指揮官・藤川球児の手腕は来季、1つのポイントだろう。いずれにせよ漢字は違うが「トラ」の名を持つ男の加入が好影響をもたらすことを期待する。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




