プロはおそろしい。そう思わせるのが阪神打線であったのは虎党にとっては幸いだろう。中日のクローザー松山晋也は復帰したばかり。8日DeNA戦でセーブをマークしているが完全ではないのだろう。そこを一気に攻め込み、2点ビハインドの9回に一挙4得点。強烈な逆転勝利だ。

この白星は連覇を狙う阪神にとって間違いなく大きい。優勝した昨季、5球団で唯一負け越し、苦手のイメージを持っていた中日の本拠地に乗り込んで今季初対戦。そこで苦しい試合を逆転できたのは、1勝以上に今後に向けて苦手を払拭する意味があると思う。

それ以上に「いいな」と感じるのは村上頌樹に黒星を着けなかったことだ。エース村上が立ち上がりに失点するケースはこれまで何度か見てきた記憶がある。試合前、そのあたりをNHKのテレビ中継の解説で球場に来ていた岩田稔(日刊スポーツ評論家)と雑談する中で聞いていた。

岩田も現役時代、立ち上がりに失点することが多かった。どんな投手でも立ち上がりが難しいのは常識だが、どういう理由でそうなるのか。岩田はこんなことを教えてくれた。

「意気込みというか気持ちの面はあるでしょうね。投げる前は抑えようと思うのは当たり前ですが、それが強いと裏目に出る。先発が難しいのは長い回を投げることが念頭にあるので、気持ちをそのまま出せない部分もありますね」

最近の大リーグでは先発投手でも最初からガンガン飛ばし、いけるところまでいって交代という感じだというが、まだ日本の野球はそうではない。やはり先発にはそれ相当の難しさがあるということだろう。

この日の村上は本調子ではないと思うが踏ん張った。7回まで2失点。先制を許したのは佐藤輝明の悪送球が絡んだものだったので自責点は「1」。それでこらえた。十分、先発の仕事はしたと言える。

阪神打線が森下翔太の1発だけに終わっていれば、粘投もむなしく「2敗目」がつくところ。だが打線が終盤に勢いづき、跳ね返した。森下、佐藤、福島圭音、さらに殊勲の前川右京と全員が気持ちを出していたのが頼もしかった。

ヤクルトが負け、阪神は今季初めて首位に立った。だが4月のこの段階では順位どうこうよりも「エースを負けさせなかった」という事実が大きい。そう思うのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 9回表阪神2死一、三塁、代打前川(左)は適時二塁打を放ち二塁で喜ぶ(撮影・上山淳一)
中日対阪神 9回表阪神2死一、三塁、代打前川(左)は適時二塁打を放ち二塁で喜ぶ(撮影・上山淳一)