今年も残すところあと少し。やり残したことはないだろうか…と振り返ったところ、ふと果たしていなかった約束を思い出した。

その約束とは…。

この夏、成田高(千葉)へ取材に行った時のこと。昨年12月から取り入れたという「砂場トレーニング」を見ながら、「私もやってみたいです!」と、ついついノリで口にしてしまった言葉。尾島治信監督(48)に連絡したところ、「トレーニングウエア-を持っておいで!」…と。

(尾島監督、約束を忘れてなかったんだ…(涙)。)

そこで、2017年最後の取材として、尾島監督との約束を果たすべく成田高グラウンドに行ってきた。


 2016年12月、グラウンドの外野に作られた横21m、縦7mの砂場。約5mを堀り下げ、柔らかい砂を運び入れ完成した。冬場は、3日に1日休みの砂場トレーニング。他の練習との兼ね合いも考慮し、メニューは3種類に分かれ、1時間の日もあれば2時間たっぷり砂場でトレーニングすることもあるという。



外野フェンスの後ろに作られた砂場。バッター陣はここでロングティーも行う


まずは、砂場で縄跳び。前跳びに後ろ跳び。さらに、走り縄跳び。

縄跳びなんて、何十年ぶり! 足は砂で取られ縄跳びにひっかかってばかり。ひっかかったらその場でジャンプ。これまた、足もとがおぼつかなくてグラグラ…。平地での縄跳びよりも体力を消耗して苦しい! これだけで、ヒィヒィーしていたら、「はい、アップ終了~!」。


え⁉ まだ、アップなの~???


ハイっ、ここであらためて、自分の軽はずみな言動を深く後悔…(涙)。



砂で足場がゆるくフラフラ…。グラウンドの倍の負荷がかかっているように感じる



ここから、ダッシュにスタージャンプ、サイドジャンプなど、約10種類のトレーニングに、小さい台を使ってジャンプのメニューまで。各メニュー、選手が3本のところを1本に免除してもらったものの、1本のメニューが終わるごとに地面に座り込む、無様なあり様。一番ビックリしたのは、選手たちはユル~イ砂場をしっかり踏み締め、ほとんどグラウンドと同じ動きができること。私なんて砂に足が取られて、あっちフラフラ、こっちフラフラとバランスが悪い。ダッシュでは、2回も顔から転倒。これこそ、体幹が弱い証拠だ。



小さい台を使ったトレーニング。前後、右左とジャンプ!


途中から女子マネージャーさんも参加し、一緒にトレーニング



続いて、今年6月から取り入れたエルゴメーターというトレーニング機械へ。これはボート競技の水上での動きを再現したもので、全身で漕ぎ手を引っ張るため全身運動に。とくに、背中やお尻の筋肉を鍛えるためには最適と言われている。



4台のエルゴメーターを使ってトレーニング


このトレーニングは、負荷をかけ500m。1分間の休みを入れて6セット。1回、約2分を目安に漕ぎ手を引っ張る。私は2本に免除。最初は楽だったものの、最後の200mからは重く感じられ、体全体、特に背中に力を入れないと引き上げられない。2分30秒がやっとだった。そんな中、私よりも重い負荷をかけている選手たちは、1分40秒~2分で次々とこなしていった。



最後は、尾島監督と勝負! …はい、もちろん負けました(涙)。(写真左から2番目が尾島監督)



「体の表面だけでなく背中やお尻も鍛えなければ、体幹を鍛えたことにはならない。右の動きをしたら左の動きも必要でしょう。エルゴメーターは、体の後ろの筋肉を強化するには最適なんですよ」と尾島監督。ハァハァ言いながら、選手たちの動きに「みんなすごい…」の言葉しか出てこなかった。


「投手だったら、100球、150球と投げても、バッターなら100本、200本振っても質の落ちない体力。そういうものを野球体力と言うんですが、その根底にあるのが下半身と体幹の強さ。冬場のオフシーズンの練習は、野球体力をしっかりつけて質を上げるのが目標。4月からはその力を維持するトレーニングに切り替える。そのために、この砂場とエルゴメーターのトレーニングは最適なんです」と、尾島監督はその必要性を話す。


成田高と言えば、創部明治35年の古豪。甲子園にも、選抜2回、選手権7回の出場を誇り、3度のベスト4入りを果たすなど、千葉県内では名門。しかし、甲子園は2010年選手権の出場から遠ざかっている。尾島監督は、「他のチームと比べ縮められるところを縮め、そこから勝機を見つける。それが俺たちの野球」と話す。

では、今のチームにおいて、何を縮めるべきなのか。

「今年の3年生に比べ、新チームの選手は技術はある。でも、他のチームに比べるとまだ中間層。そこに、野球体力をしっかりつけることで突き抜けることができる。だから、この冬場に野球体力をつけなければならないのです」


 2017年のチームから新チームへ。先輩たちが残した反省が、次のチームの血となり肉となり、1つの伝統となって引き継がれていく。大会で残した結果だけが伝統ではない。成田高らしく力をつけている選手たちの姿こそが新たな伝統の継承。端から見ていて、いつか花咲くその日が楽しみになった。


この日、約2時間。砂場では下半身の筋肉に、エルゴメーターでは、上半身も加え全身の筋肉を使い、ヨタヨタと歩きながら、家までようやっとたどり着いた。選手のトレーニングをほんの少し体験させていただき、あらためてその厳しさを体感した。成田高だけでなく、全国には、来夏の甲子園を夢見て、今このときも厳しいトレーニングに汗を流している選手がたくさんいるはず。2018年が、全国で頑張っている選手たちの夢叶う年になりますように…。心からそう思った年末だった。


さて、翌日-体中が痛くて、ベッドから起き上がれなかったのは、言うまでもない…。

あぁ~やっぱり、選手ってスゴイなぁ…。