創部初となる2季連続甲子園出場(2017年夏、18年春)を果たした東筑が、3月1日に卒業式を終えた。夏の北福岡大会は北九州に2-5で初戦敗退したが、選手たちの顔には高校野球をやりきった充実感があふれていた。

東筑からは、法大へ進学するエース石田旭昇投手を含む、北村謙介選手(捕手・慶大進学予定)、菊池聡太選手(外野手・早大進学予定)、林大毅投手(投手・立大進学予定)の4人が東京6大学で野球を続ける。「神宮」での再会を誓う4人に、新たな決意を聞いた。


■東筑から早慶法立へ-。


2月下旬、北村選手の元に慶大合格の知らせが届いた。東筑117期の代から東京6大学野球へ進む選手が“4人”となった。2年夏、3年春に甲子園出場した石田投手は法大へ。2年秋の県大会で優勝投手になった林投手は立大へ。5番打者として打の中軸を担った菊池選手は早大へ。3人はすでに指定校推薦などで合格を決めていたが、北村選手が一般入試で「春」をつかみ、野球部に喜びの声が広がった。

北村選手は「AO入試で落ちてから、一般入試に気持ちを切り替え、多い日は1日10時間くらい勉強しました。(一般入試に合わせ)受験科目も変わって大変だったけど、慶応で野球がやりたい一心で、頑張れました」。頭脳的なインサイドワークで石田、林投手らの長所を引き出してきた。高い分析力を武器に、大学でもレギュラー入りを狙う。


東大、京大など毎年約200名の国公立大学合格者を出している東筑。県内屈指の進学校として有名だが、野球部から4人もの選手が東京6大学の硬式野球部に進む年は珍しいそうだ。

青野浩彦監督(58)は「出場機会を求めて国公立大学の道もあったと思うが、4人は東京6大学という道を選んだ。寮生活など、新しい環境に苦労するかもしれないが、レベルの高い道を自分で選んだからには、頑張ってほしい」とエールを送った。4人は青野監督から「野球のために、勉強を1番に頑張る」という教えを受けてきた。他部との共用グラウンドで、平日2 ̄3時間しか練習時間がない中、自分たちで「文武両道」のやり方を考え、実践してきた。難関クラスに在籍した菊池選手は塾に通いながらレギュラーとして活躍。2年夏の甲子園(済美戦)では、2安打1打点と奮起した。センバツでは悔しい思いを味わったが「甲子園は、勉強も頑張ってきたことへの贈り物だと思った」と言葉をかみしめる。石田投手は地道な努力で入学時から球速が20キロアップし「夢だった甲子園に、自分のようなピッチャーが2度も行けるなんて信じられなかった。上でも野球を続けようと思った」と話す。甲子園出場という経験が、次の夢につながる翼となったことは間違いない。


■野球の夢と、もう一つの夢

左から立教大・林大毅、法政大・石田旭昇、慶応大・北村謙介、早稲田大・菊池聡太(大学は4月に入学予定)
左から立教大・林大毅、法政大・石田旭昇、慶応大・北村謙介、早稲田大・菊池聡太(大学は4月に入学予定)

野球だけの大学生活ではもったいない。4人に「大学生活でやり遂げたいこと」を聞くと、


石田「負けない投手」

林 「最多勝投手」

北村「リーグ優勝&大学日本代表」

菊池「3冠王&謙虚、笑顔」


予想に反して(?)4人全員が野球の目標を掲げた。石田投手は「大学野球がまだどういう世界がわからないけど、もう負けたくないです」と勝ち気な表情を見せた。高3夏の敗戦が今でも悔しいのだと言う。「大学で試合に出られなかったとしても、高いレベルで野球をしたかった。社会科の教職を取って野球の指導者になりたい」という夢も語った。石田投手に負けない速球で切磋琢磨(せっさたくま)してきた林投手は「卒業後、社会人野球で野球を続けられるような活躍をしたい」。子供のころからの夢、プロ野球選手になることもあきらめてはいないそうだ。

北村選手は将来、起業家になってお金を稼ぎたいと言う野望がある。「目標は年収5000万円。自分のお金を使って社会貢献をしたい」。菊池選手の夢は商社マン。「子供のころから、外国の人にたくさん会ってみたいという夢があって、父と話をしていく中で商社への憧れが高まった」。4人が色とりどりの夢を明かしてくれた。

野球の夢と、仕事の夢。2つの夢をかなえるための大学生活がまもなくスタートする。文武両道をやりきった4人の視野は、広く、希望に満ち、不安もありながらも、どこか悠然としており、これから訪れるであろう壁をも楽しみにしているようにも見えた。【樫本ゆき】

3月1日の卒業式のあと、後輩と記念撮影をする東筑野球部の117期生
3月1日の卒業式のあと、後輩と記念撮影をする東筑野球部の117期生