開幕戦は、福島が福島西に勝利した。初回に4番舘下滉平内野手(3年)の2ラン、5番武内優捕手(2年)のソロと2者連続本塁打で3点先制。4-4の9回に再び舘下、武内がそろってタイムリーを放ち、勝ち越した。

 福島の4、5番コンビが、ド派手に夏の幕を開けた。1回表2死一塁で舘下が「気持ちでいってくれた」と左翼中段へ2ラン。武内も「舘下さんのおかげで、ピッチャーがダメージを受けていたから打てた」と、ほぼ同じ場所へソロを運んだ。2人の公式戦初アーチで3点リードを奪い、福島スタンドは一気にお祭り騒ぎとなった。

 だが福島西に徐々に詰められ、8回裏には4-4の振り出しに。迎えた9回表の攻撃。1死一、二塁のチャンスで舘下が左中間を破る適時二塁打を放つと、なお2死二塁から武内が中前タイムリー。ホームランコンビが再びそろい打ちし、開幕勝利につなげた。

 実はこの日の朝告げられたオーダーでは、4番が武内で舘下は6番だった。4番のプレッシャーに苦しむ舘下を楽に打たせようとする千葉真佐春監督(59)の計らいだったが、舘下は「4番でお願いします」と志願。「ホームランを打って帰ってきたら、ベンチで監督に『さすがだな』と言ってもらいました」と、うれしそうに振り返った。

 ともに、離れた故郷への思いを胸に秘める。大熊町出身の武内は小6の卒業式を前に被災。一時栃木に避難し、今は福島市内の借り上げ住宅に住む。次戦の相手磐城桜ケ丘には、バラバラに避難した小学校の同級生、川上綾太(2年)がいる。「勝って戦おう、と話していたのでうれしい」。

 双葉町出身の舘下も、震災後に家族とともに福島市に移住した。「野球をして何かに取り上げられると、それを見た町の方々が連絡をくれる。双葉町の人たちのためにも、と思ってプレーしています」。2人のバットには、勝利と、ふるさとへの思いが込められていた。【高場泉穂】

 ◆舘下滉平(たてした・こうへい)1997年(平9)8月30日、福島県双葉町生まれ。双葉北小2年から「双葉リトル」で野球を始める。双葉中、信夫中では軟式野球部に所属。福島では1年秋からベンチ入り。173センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は両親、弟。

 ◆武内優(たけうち・ゆう)1998年(平10)8月19日、福島県大熊町生まれ。熊町小2年から大熊野球スポーツ少年団で野球を始める。蓬莱中では軟式野球部に所属。172センチ、67キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄2人。