“リトル金剛力士像”たちが30年ぶりの甲子園を狙う。藤嶺藤沢が8回コールドで厚木を破った。3月に非常勤コーチとして就任した同校OBで元西武の石井貴氏(43)の教えの下、先発した岡本直士投手(3年)が3回を2安打1死球無失点と好投。続く2投手も無失点に抑えて快勝した。

 あどけなさが残る表情とは裏腹に、岡本は気迫十分に内を攻めた。「石井さんに『もっとストレートで押して内を攻めていけ』と言われました」。2回無死一塁。右打者へ内角直球を放り、投ゴロ併殺に打ち取った。無失点で大西一輝(2年)につなぎ、最後は88年神奈川大会(対大秦野)で大会タイの20奪三振の記録を持つ山口好則(二宮)の息子、山口大樹(3年)が締めた。

 現役時代、石井氏は気合を前面に出して投げる姿から「投げる金剛力士像」と評された。岡本も「最初は怖い人かと思いましたが、話すとお兄さんみたいで優しいです。技術よりも『投手としての在り方』を教えてくれます」と現役時代を知らなくても、今ではすっかり“ファン”になって、その教えを実践している。

 3月に石井氏が非常勤コーチとして就任してからは、ブルペンでも打者を立たせて内角を攻める練習を繰り返した。岡本がこの日奪った三振は1つ。左右関係なく胸元を突き、6つの内野ゴロで打ち取った。「今まではインコースになかなか投げられなかったんですが、今日はうまく内角を使えました。この後も一戦必勝で、どんどん相手に向かっていきたいです」とハートの強さも学んだ。

 高校野球100周年の節目の年に、同校も創部100周年を迎えた。野球場は総合グラウンド化され全面人工芝になるなど、学校もバックアップする。石井氏の2学年後輩にあたる中丸洋輔監督(41)は4月に就任し「石井さんが積極的に話しかけてくれてコミュニケーションを図ってくれる。選手も考え方が変わってきていると思います」と手応えを感じている。30年ぶりの甲子園へ、新たな歴史を刻む夏にする。【和田美保】