キヨシと神奈川を盛り上げる! 全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)神奈川大会で、土屋恵三郎監督(61)率いる星槎(せいさ)国際湘南が、3年ぶりに校歌を響かせた。13年まで桐蔭学園を指揮した名将は、今年から同じ神奈川の同校監督に就任。前日13日のDeNA-巨人戦での親友・中畑清監督(61)の戦いぶりをヒントにした「攻めだるま作戦」で2回に一挙5得点。ベンチ入り20人のうち19人を起用し、投手は6人の継投。全員野球で1勝をもぎとった。

 勝った。だが、ナインはその後の手順が分からない。周囲に促されて整列し、3年ぶりの校歌を叫んだ。土屋監督は「3年生は1度も校歌、歌ってなかったから。やり方知らないんだな。1つ勝つのは大変だな、勝って良かったよ」。新天地での夏の初戦。ナインの笑顔が、うれしかった。

 「キヨシの言う通りだよ」。試合前の同監督は、前夜のDeNAの快勝に決意を新たにした。同年齢で大学時代から大親友の中畑監督の采配で、1回に4球で2者連続本塁打。「今の子には『積極的に振りなさい。失敗してもいいんだぞ』と指導をしないと。萎縮してしまうから」と積極性が大事と再確認。さらに一体感も重要だ。厳しさを前面に出すばかりでは、今の時代、孤高の存在になってしまう。「代打オレ、あるぞ」などと驚かせ、選手との距離を縮める。目指すは、監督も含めた全員野球だ。

 まさに有言実行だ。毎回のようにシフトや選手を交代。ベンチ入りの20人中、19人を起用した。投手も小刻みに6人つぎ込む。6回1死二、三塁の場面では、1ボール2ストライクで4番手を投入し、しのいだ。

 2回は1死三塁から打って打って5得点。一方、4回は1死満塁でスクイズを指示。だが、5番平井は投手フライで併殺に倒れた。ベンチに戻った平井に、土屋監督は「サインを出した監督が悪いんだ。切り替えろ」と鼓舞した。「あの言葉で楽になりました」と、平井は後の2打席連続安打を放った。

 「桐蔭の時は選手はエリート。1つ言えば、その通りできた。ここは違う。だから、基本を繰り返す」。今は雑草軍団の成長が、楽しくて仕方ない。「これからスタートです。(横浜)渡辺先生(横浜商大高)金沢先生(慶応)上田先生が、この夏限りでお辞めになりますが、まだまだ神奈川を盛り上げていきたい」。春夏10度甲子園に出場した名将の情熱は、この1勝でさらに燃え上がった。【金子航】