「和製ベーブ・ルース」が、夏の洗礼を受けた。全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)西東京大会で、ラグビー・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(48)の長男、早実・清宮幸太郎内野手(1年)が苦しみながらも初戦を突破した。「3番一塁」で先発し、第4打席まで無安打。8回1死三塁で迎えた最終打席で、左翼への飛球が遊撃後方に落ちる適時打を放って3打数1安打1打点としたが、会心の打球はなかった。守備でも7回に失策を記録するなど、ほろ苦の夏デビューとなった。

 苦しみながら勝利をつかんだ瞬間、清宮が「よしっ」と声を上げた。8回1死三塁。夏初安打、初打点をマークした。だが、ポテンヒットだった。「あんなので、すみません。期待に応えられませんでした。これが夏なんですね」。報道陣に囲まれた16歳は、大粒の汗をぬぐいながら、苦笑いを浮かべた。

 怪物ルーキーも平常心ではいられなかった。台風接近による雨で2日連続の順延となって迎えた初戦。「試合が楽しみで待ちくたびれていた」と言うが、会場には観衆3500人と報道陣26社90人が集結した。ネット裏には大リーグパドレスのスカウトらが陣取り、前日17日が48歳の誕生日だった父の姿もあった。清宮は「(前日は父と)会えていないので『おめでとう』も言えてない。緊張してなかったはずなんですけど、今日は硬かった」。初体験の夏の大会に、自然とプレーに力が入った。

 強烈な印象を与えた春の打撃は影を潜めた。第1打席は徹底的に外角に投げられ、3ボールからの4球目に甘く入った直球を打ち損じてファウル。結果は四球も「ミスショットしたあの球を一発で仕留めなきゃいけない」と悔やんだ。第2打席は変化球攻めに体勢を崩され、2度空振りした。「いつもは狙った球でなくても打てるけど、調子がおかしかった」と何度も首をひねった。

 清宮の“反省会”は続いた。7回の守備で一塁への平凡なライナーを落球。「みっともないです」と漏らした。8回には一塁線へのゴロを前進して捕球した後、打者走者にタッチするか、戻ってベースを踏むか、立ち止まって迷う場面があった。最後は「次はもっとリラックスして、いつもの自分で打撃も守備もやりたい」と切り替えた。

 不本意な内容でも、春の都大会から公式戦4試合連続で安打と打点を記録した。和泉実監督(53)は「1年生らしい部分が見られてよかった。次への第1歩だよ」と言った。夏の怖さを知った清宮が、今日19日の府中西との4回戦で爆発する可能性は十分にある。【鹿野雄太】