春夏連続甲子園出場を狙う天理が、奈良大会屈指のカードとなった智弁学園に快勝した。大会NO・1スラッガー・船曳海(わたる)外野手(3年)が同点&決勝となる2打席連続本塁打。投げては冨木崚雅投手(3年)が7安打完投で、宿敵に昨夏のリベンジを果たした。

 船曳の2打席連発は、右翼後方にある橿原神宮の深緑の林に打ち込まれた。

 1点を先制された直後の3回裏2死走者なし。カウント3-0から積極的に打って出る。空振りしたが、その次の真ん中高めの直球を右中間への同点弾にした。外野手は追うのをすぐに諦めたほど完璧な当たりだった。

 船曳 追い込まれる前にどんどん、打って行こうと思っていました。打った瞬間いったと思いました。3ボールからでも打つのは僕のポリシーなんです。

 勢いは止まらない。同点で迎えた5回裏2死一塁。またもカウント3-0から打っていった。今度は一発で仕留めた。ライトポール際への打球が切れずに勝ち越し2ランとなった。

 船曳 切れるかなと思いましたけど、体を開かずにうまく打つことができました。勝手に体が反応した。

 公式戦では自身初となる1試合2発。それも場外へ消えた。スタンドで応援した母恵美子さん(45)は「2本もホームランを見ることができてうれしいです。自宅には、ホームラン球を集めてあるんです」。この日の高校通算16、17号となる記念球も貴重なコレクションとなった。

 ネット裏に陣取った阪神、オリックスをはじめとする10球団のスカウト陣も、船曳の2発には舌を巻いた。オリックス中川チーフスカウトは「3ボールから打って行くのは自信があるからなんでしょう。すごい集中力です」と話した。

 宿敵を倒したが橋本武徳監督(70)は「まだまだ、いっぱいヤマがあります」と気を緩めない。長打力に加え50メートル走5秒9の俊足も兼ね備える「1番・船曳」が、チームを甲子園へ引っ張っていく。【坂祐三】

 ◆船曳海(ふなびき・わたる)1998年(平10)1月13日、兵庫県姫路市生まれ。勝原小でソフトボールを始め、朝日中では姫路西リトルシニアでサード。DeNAの万永貴司2軍コーチ(43)は叔父で、好きな球団はDeNA。50メートル走5秒9。183センチ、75キロ。右投げ左打ち。家族は父、母、兄2人、妹。