元ロッテ監督の山本功児氏(63)の長男、九州国際大付(福岡)の4番山本武白志(むさし)内野手(3年)が、2打席連続本塁打を放ち、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。5回に3ラン、7回にはバックスクリーンに同点ソロを運び、大阪偕星学園を破った。

 狙い通りの1発だった。1点リードの5回1死一、二塁で4番山本が左越え3ラン。2度ガッツポーズをすると、満員の4万7000人の大歓声を受け、ダイヤモンドを回った。

 「今までの人生の中で最高のホームラン。注目が集まる中で、あの歓声は初めてだったけど、イメージしていた通りだった。大歓声を浴びるのは(昨夏、甲子園で初戦敗退後)1年間ずっと思い続けていたこと。すごくうれしかった」

 さらに1点ビハインドの7回にも2死から中越え同点ソロ。甲子園を沸かせたスラッガーに肩を並べる2打席連続本塁打でチームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。楠城徹監督(64)も「今日の弾道はホームランバッターの弾道」とうなずいた。大阪代表が相手でアウェーの雰囲気にも「僕は物おじしない性格。福岡でも(9回に0-3から逆転した準々決勝の)朝倉戦の方がもっとすごかったんで」と笑った。

 初戦鳴門戦は1安打に終わり、右手に力が入りすぎていたフォームを修正した。前夜(12日)は考え込んでしまい、30分寝付けなかったが、巨人の4番として活躍した元ロッテ監督の父功児氏から甲子園出場決定後にもらった「リラックスしてやってこい」というアドバイスを胸に、打席に立った。

 3年間、野球にすべてをささげてきた。雨で練習が中止になっても、ほかの部員が遊びにいく中、ただ1人帰宅し、休養にあてた。高校入学と同時に家族ともども福岡県内に引っ越しし、野球に専念した。自宅では必ず夜10時に就寝。長電話やメールをしないよう、携帯電話はリビングに置いて寝るという両親との約束を3年間守り通した。「野球の神様は見ていてくれたんだと思う」。

 これで九州国際大付は09年以来、6年ぶり2度目の16強。山本は「ここからチーム一丸で全部勝ちたい」と、全国の頂点へと思いをはせた。【福岡吉央】

 ◆山本武白志(やまもと・むさし)1998年(平10)2月17日、横浜市生まれ。元石川サンダーボルトで小3から投手、三塁手として野球を始める。中学は都筑中央ボーイズでプレー。九州国際大付に進み1年秋から三塁手でレギュラー。昨秋から4番。高校通算23本塁打。右投げ右打ち。188センチ、89キロ。家族は両親。

 ◆元プロを父に持つ選手の1発 最近では10年夏に宮下明大(関東第一)が2試合連続本塁打。宮下の父正彦さんは大洋外野手だった。10年春の吉沢翔吾(日大三)は阪急、南海で外野手だった父俊幸さんも日大三で本塁打を打っており、甲子園初の父子アーチ。80年夏の佐藤孝治(早実)は父孝夫さんが国鉄で本塁打王。91年夏の若林隆信(佐賀学園。父淳至=西鉄投手)は1発打った天理戦で完投勝ち。堂上直倫(愛工大名電。父照=中日投手)は05年春に2発(準々決勝、決勝)。

 ◆山本功児の連発 山本の父功児さんはプロ通算64本塁打で、1試合2打席連発は3度ある。巨人時代の79年は3番王の後の4番を打った7月10日広島戦で福士から。82年6月11日阪神戦では打順7番で小林から放った。ロッテ時代の87年7月10日西武戦では4番で満塁、ソロの連発。