ストップ・ザ・聖光再び! 春2度、夏7度の計9度の甲子園出場を誇る古豪磐城が学校創立120周年の今年、春に続いて夏9連覇中の聖光学院を倒し、95年以来、21年ぶりの聖地を狙う。春の県大会準決勝で聖光に14安打を浴びせて10-9で競り勝った。しかし決勝で光南に敗れ、東北大会も九里学園(山形)相手に守備が乱れて初戦敗退に終わった。2度の敗戦を機に雑念を捨て去り、10日の南会津との初戦に挑む。

 聖光撃破から一転、チームはもがき苦しんでいた。春県大会決勝と東北大会では、相手に食らい付く粘り強い本来の野球を発揮できず連敗。就任2度目の夏を迎えた同校野球部OBの木村保監督(45)は「聖光に勝ったチームと、勝手に自分たちで背負い過ぎていた。夏本番までに伸びしろはまだまだある」と冷静に分析した。

 東北大会で敗れた夜、相沢健生主将(3年)が中心となって緊急ミーティングを行った。厳しい意見をぶつけ合った中で相沢は「聖光に個人の能力で勝ったわけじゃなく、相手に勝ちたい気持ちが上回って実力以上の力が出た。勝った自信を過信にしちゃいけない」と結論づけた。

 チーム内にまん延していた達成感を一掃した。聖光戦で2安打を放ち、試合後に号泣した4番草野隼人内野手(3年)は「聖光に勝ったのはあくまで春の話。自信になるけど、夏は夏。もう自分の中では捨てました」と切り替えている。理想に掲げる「食らい付く野球」を夏本番で再度展開するために、東北大会後はほころびが出た守備を整備した。今月2日からの練習試合では2戦とも完封勝ちし、万全の状態で開幕へ向かう。

 夏10連覇を狙う絶対王者聖光とは、順当に勝ち上がれば準決勝で激突する。草野は「多少は意識すると思うけど、まず1戦1戦やらないと」と10日の初戦に照準を合わす。学校創立120周年の節目の年に「夏に強い磐城」の金看板を再び打ち立て、名門復活を堂々宣言する。【高橋洋平】

 ◆県立磐城高等学校 1896年(明29)に創立され、野球部は1906年に創部。甲子園には計9度(春2夏7)出場し、71年夏は「小さな大投手」田村隆寿投手を擁し、準優勝に輝いた。01年に共学化。生徒数は953人(女子466人)。主なOBはTBSアナウンサーの高野貴裕。所在地はいわき市平字高月7。阿部正春校長。