第98回全国高校野球選手権埼玉大会の開会式が9日、大宮公園野球場で行われた。開幕試合では新座柳瀬と越谷総合技術が戦い、小泉篤史監督(32)の「丸刈りリラックス大作戦」が奏功した新座柳瀬が10-3の8回コールド勝ちを果たした。昨秋以来、現チーム初めての公式戦勝利の裏には、監督の経験を生かした粋な計らいがあった。

 「お前ら気合入ってるか? 俺は気合入れてきたぞ!」。アップ直前の三塁側ベンチ。小泉監督は、そう言って帽子を脱いだ。その瞬間、ナインは笑いに包まれた。見慣れない6ミリ刈り頭は、選手たちの緊張を完璧にほぐした。リラックスしたナインは気負うことなく、プレーボールを迎えることができた。

 狙った演出だった。小泉監督は10年夏にも同校を率い開幕試合を戦った。だが、鷲宮に0-5で敗れた。開幕試合独特のプレッシャーは尋常でない。経験から学んでいた。選手たちをリラックスさせるべく、前日の8日に行きつけの美容院で頭を丸めた。

 効果はてきめんだった。4-3の8回に大爆発した。1死満塁から石井風向威(かむい)外野手(2年)が押し出し四球で1点を奪うと、続く原湧大(ゆうた)内野手(2年)のスクイズで1点追加。2者連続四球でさらに1点を追加し、2死満塁で主将加藤孝祐(たかひろ)捕手(3年)が左越えの2点適時打。さらに、阿部隆也外野手(3年)の打席で相手投手が暴投。一気6点の猛攻で、8回コールドで開幕を飾った。

 ナインは丸刈りに感謝した。5回に勝ち越しの左前適時打を放った高天(こうてん)太朗外野手(2年)は「みんなに笑いが起きて、良い雰囲気の中、試合に臨めました」と振り返る。加藤主将も「まさか丸刈りにしてくるなんて、思ってもみなかったです。緊張がほぐれました」と効果を口にした。

 本来の力を出すのが課題だった。6月上旬、選手たちが目標を定め「1日1000本」「1週間で1万本」など己に厳しい試練を課した。練習試合で7連勝を果たすなど、流れに乗っていた。サプライズがはまって、練習の成果を出せた白星だった。「高校生ぶりの丸刈りです。身を削りましたよ」。頭をなでる小泉監督は、してやったりの表情だった。【杉山理紗】